ライカは嘘や隠し事をするのが下手な性格
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法王から説明を受けた後、非公式にしては内容の濃すぎる座談会は閉幕した。
俺としては、法王が公式見解の撤回について、断固拒否の立場ではなさそうだということが分かったので、それだけでもこの座談会は有意義だったと言える。
「ヒナも覇王丸様と同じ部屋に泊まりたいです」
退室する段になって、ヒナが俺の脚にしがみ付いて駄々をこねはじめた。
「困りましたね。私たちがここを訪れたことは、公にしたくないのですが……」
法王が頬に手を当てて思案顔になる。強引に連れて帰るという選択をしないあたり、ヒナは甘やかされているようだ。
俺は腰を屈めてしゃがみ込むと、ヒナの頭を撫でた。
「俺と一緒に旅をするんだろ? だったら、自分の部屋に戻って荷物をまとめておけ」
「……分かりました」
ヒナは不承不承といった感じで頷くと、最後に俺の体にギュッとしがみ付いてきた。
ハグかと思って俺がヒナの背中に手を回すと、
「んー」
不意打ち気味に、頬にキスをされてしまった。
『ああっ!』
「ああっ!」
頭の中と、すぐ後方から、声が上がった。
頭の中の声は山田だが、後ろの声は――――
「……ライカ?」
「失礼いたしました」
俺が後ろを振り返ると、ライカは何事もなかったかのような澄ました表情で、使用人らしく一礼する――――が、スカートがもぞもぞと蠢いている。
(尻尾が! バレる! バレるから!)
俺が声を出すに出せない状況で焦っていると、それを見たゲンジロウ爺さんとロザリアがさり気なく立ち位置を変えて、法王とヒナの視線を遮ってくれた。
「ヒナちゃんも、明日の会談には出席するの?」
「分かりません。どうなんですか?」
「ヒナにも最初から参加してもらいますよ。少し長くなるかもしれないから、今日は早く寝ましょうね」
ロザリアのナイスな質問により、ヒナと法王の注意が完全にライカから逸れた。
(サンキューサンキュー)
『有能』
俺が軽く手を掲げて謝意を伝えると、ロザリアはにっこり微笑んだ。
巨乳で、気が利いて、美人で、お姫様とか、スペックが高すぎる。
「それでは、失礼します!」
「また明日な」
最後に、母子のように手を繋いだ法王とヒナの二人を、俺は手を振って見送った。
「さてと……ライカ?」
「すみませんでしたっ!」
俺が振り返ると、そこにはまるでアホ兄弟のように美しく洗練された土下座をするライカの姿があった。
さすがに、取り返しがつかなくなる恐れのある失態だったという自覚はあるらしい。
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