ゲストハウスに案内される
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大聖堂で歓迎式典が執り行われた後、俺たちは来客用のゲストハウスに案内された。
ゲストハウスには巡礼者が宿泊する簡易宿泊所のようなものから、国賓用の迎賓館までピンキリがあり、俺たちが通されたのは後者の方だった。
聖地まで同行した護衛の兵士とアホ兄弟は、簡易宿泊所に泊まりつつ、交代で俺たちの警備に当たるらしい。
ただ、これも間者対策だと思われるが、宿泊施設の外を移動する際には、必ず神聖教会側の衛兵を同行させることが義務付けられた。
そのため、迎賓館の周囲はアルバレンティア王国の兵士と神聖教会の衛兵が合同で警備に当たるという奇妙な状態になっている。
義務を免除されて、敷地内の自由な移動を認められたのは、大使のロザリアと、勇者である俺とゲンジロウ爺さんの三人だけだった。
「部屋割りはどうする? 覇王丸とライカは同部屋でよいのか?」
「そうしてくれ」
俺は応接室のソファでライカに膝枕をしてもらいながら、迎賓館付の使用人に応対しているゲンジロウ爺さんに、ひらひらと手を振って答えた。
聖地に滞在している間、ライカは俺の従者という扱いなので、関係者の目がある場所では、今までと同じように接することができない。
ゲンジロウ爺さんはいつもの「ライカ嬢ちゃん」ではなく、名前を呼び捨てにしているし、俺もライカがソファに座っても不自然ではないように、わざわざ膝枕をさせている。
『先日、妹に膝枕をさせていたから、てっきり脚フェチになったのかと思いましたが』
(そんなわけねーだろ)
リリエルに膝枕をさせた時は懲罰なので遠慮なく体重をかけていたが、今は首に力を入れてライカに負担がかからないようにしている。俺は紳士なのだ。
「今日はもう何も無いんだよな?」
寝転がった姿勢のまま尋ねると、ソファにもたれかかっていたロザリアも珍しくだらしない姿勢のまま頷いた。
「夜に食事会がありますが、関係者だけを集めた小規模なものです。会談の前の顔合わせではありますが、気楽に参加していただければ」
法王との会談は、明日の午前中に予定されている。
「そう言えば、法王って女だったんだな」
俺は歓迎式典の場で目の当たりにした神聖教会における最高位の聖職者の容姿を思い出して、咎めるようにロザリアを見た。
「はい。驚きましたか?」
「勝手に白髪の爺さんだと思っていたから、驚いたよ」
「信徒の多いアルバレンティア王国では有名な話だと思っていたのですが、たしかに覇王丸様には事前にお伝えした方が良かったですね」
ロザリアはそう言って笑ったが、案外、わざと黙っていたのかもしれない。
自分が聖地まで同行することも黙っていたし、意外に悪戯好きな性格をしているのだ。
「男社会だと思っていたけど、女でも法王になれるんだな?」
「勿論、選ばれればなれます」
「でも、まだ若いだろ?」
「そうですね。……法王猊下は、神聖教会で一番の治癒魔法の使い手なのです」
神聖教会で一番ということは、すなわち世界一の治癒魔法の使い手ということだ。
「神聖教会は治癒魔法を神の奇跡だと定義していますから。その一番の使い手ということは、最も神に祝福された存在ということになるのです」
「だから、年齢も性別も関係なく選ばれたのか」
「はい。私とは年齢も近く、同性なので、昔から良くしていただいています。ジョアンを連れて帰る時にも、お力添えをいただきました」
ロザリアは昔を懐かしむようにしみじみと呟いた。
「そういえば、ロザリアって何歳なんだ?」
「あら。覇王丸様、そういうところですよ? 不躾に女性に年齢を尋ねるなんて」
ロザリアが俺をからかう口実を見つけたとばかりに身を乗り出した時、扉がノックされて、慌てた様子の使用人が入ってきた。
法王猊下がお越しになりました。
使用人は動揺を隠しきれない様子で、法王の突然の来訪を告げた。
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