怒涛の連続カミングアウト
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明日です。
「俺が思っていたよりも、ガチで本気だったみたいだな」
「だから、言ったじゃねーか」
「まさか、親父が出張ってくるとはなぁ」
感想を言い合う俺とジェニオの会話に、住民の代表が眉を潜める。
「あの……父親というのは?」
「――――あ、そうか。軍に所属していない奴は、俺のことを知らないんだな」
ジェニオは意外そうに呟いた後、俺を見て「どうする?」と尋ねてきた。
「隠したところで、いずれはバレるだろ。それに、ちゃんと説明するって言っちゃったし」
「それもそうだな」
バレるまで隠し続けるよりは、今、打ち明けてしまう方が、長い目で見た時に、良い方向に転がるような気がする。
「そんじゃ、言っちゃうけど。俺、魔臣宰相の息子なんだよ」
「!?」
「そんで、こっちの大男は人間の勇者」
「!?」
「今は俺も軍を抜けて、単独で行動しているんだ。だから、敵じゃないというのは本当だし、脱走兵みたいなものだから、境遇としては、お前らと変わらねぇよ」
「!?」
立て続けに驚愕の事実をカミングアウトされて、住民たちは誰も、すぐにはリアクションを取れなかった。
「そんな俺から、お前らに提案があるんだ」
だが、ジェニオは、住民たちが落ち着くのを待とうとしなかった。このまま勢いに任せて、全部、言ってしまうことにしたらしい。
「俺は、お前らに安全な場所を提供できる。そこに町を作ろうと考えているんだけど、でも、まだ、全然、人がいなくてさ。だから、お前らさえよければ、そこに避難しないか?」
畑作りや町作りを手伝ってくれれば、安全な暮らしを保障するぞ、と。
ジェニオは軽い口調で提案したが――――
「……?」
住民たちは当然のように、訳が分からない様子で、酷く混乱していた。
*
独立派に対抗する形で、同じように戦争反対を掲げる新勢力を立ち上げること。
それが、征龍候を追い詰めるために、俺が考えた「独立派を内側から切り崩す」方法だ。
話だけを聞くと、突拍子もない奇策のように思えるが、そこまで荒唐無稽な作戦ではない。
「要するに、お前らの選択肢が増えるだけだよ。このまま、この集落に残って、第三の襲撃に怯えながら、いつになるか分からない第二の迎えを待つのか。それとも、俺たちの言うことを信じて、少なくとも、安全だけは保障されている場所に避難するのか」
強制するつもりはないから好きに選んでくれよ、と。
ジェニオは決断を促したが、いくらなんでも判断材料が少なすぎる。
「そ、その安全な場所というのは、どこなのでしょう?」
本当に安全な場所なのですか? と。
住民の代表は、至極当然な疑問を口にした。
「ここから、南に行ったところにある第三の砦だよ。今は竜の巣に攻撃されてボロボロの状態だけど、雨風を凌ぐくらいなら、何の問題も無い。砦としては機能しないから、第三の本隊も撤収しちまったし、当面はそこを拠点にして、周りに町を作ろうと考えているんだ」
「そ、そこでは、竜の巣に近すぎるのではないですか?」
「だからこそ、安全なんだよ」
住民の不安を笑い飛ばすように、ジェニオは不敵に口角をつり上げる。
「この前の竜の巣との戦闘で、第三はシャレにならないほどの損害を出したんだ。ただでさえ第二が裏切ったせいで、人類軍との二正面が避けられない状況なのに、懲りもせずに竜の巣を刺激するようなことを、魔臣宰相がすると思うか?」
「それは……」
「絶対にしねーよ」
ジェニオは有無を言わさぬ口調で断言した。
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