怪しい者ではありません
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次回の更新は明後日です。
「よし。いいぞ」
「いいぞじゃねーよ! なんで、わざわざ俺の視界を塞ぐように着地するんだよ!」
俺がワタシを褒めると、すぐさまジェニオが文句を言いながら、小走りで俺たちの前に回り込んでくる。
集落の住民は、驚き、呆気に取られている者が半分、恐怖で怯えている者が半分という感じだ。ジェニオはともかく、竜が近くに降りてきたというのに、突発的な集団パニックに陥らなかったのは、幸いだったと言える。
そして、そんな住民を守るために、俺たちの前に立ちはだかるはずの、武装した兵士の姿はどこにも存在しなかった。
(……もしかして、ここにいるのは、全員、民間人なのか?)
この場に、軍に所属する兵士がいたら、勝ち目があるか無いかはさておき、非戦闘員である住民を守るために、前に出てくるはずだ。
それがないということは、この集落に、兵士は一人もいないのだろうか? だとしたら、第三方面軍の攻撃により、負傷してしまったのかもしれにないし、あるいは連行されてしまったのかもしれない。どこかに隠れている可能性も、ゼロではないと思うが……。
「一応、ライカとヒナが魔法で攻撃されないように、見張っておいてくれるか?」
「心配しなくても、俺の目の届く範囲で魔法攻撃なんかさせねーよ。というか、なんで、俺がお前の嫁を護衛しなきゃなんねーんだよっ」
ジェニオが悪態をつきながら一歩近づくと、それに反応して、住民も波が引くように後ろに下がった。座ったまま移動した者もいれば、立ち上がって後ずさった者もいる。
「待て待て。見るからに怪しいかもしれないけど、俺たちは敵じゃない。少なくとも、危害を加えるつもりは無いから、安心してくれ」
ジェニオは慌てて、住民を落ち着かせようとするが、効果は薄いようだ。
(そりゃそうだよな)
第三方面軍に攻撃されて、集落を徹底的に破壊されてしまったところに、追い打ちを掛けるかのごとく、軍人だと思われる明らかに格上の魔人と、竜と、正体不明の大男が現れたのだ。安心しろと言われても、それは不可能だろう。
このままだと、まともに話すら聞いてもらえない恐れがあるので、俺は先に住民の警戒を解く――――敵ではないことを、理解してもらうことにした。
「この中に、怪我人や、体の具合が悪い奴はいるか?」
大声で呼び掛けて注目を集めてから、俺はワタシの背中から飛び降りると、ライカとヒナを順番に抱きかかえて、地面に降ろした。
「治癒魔法を使える神官を連れて来た。あまり多くないけど、回復薬もあるぞ。金は取らないから、怪我人や病人がいたら教えてくれ」
第三方面軍に襲われたばかりなのだから、怪我人は絶対にいるはずだ。こんな劣悪な環境で生活をしていたら、体調を崩す者だっているに決まっている。
(全部、分かった上でやっているわけだが)
『詐欺師の手口みたいですね』
(自作自演じゃないからセーフ)
とはいえ、恐ろしいほど察しの良い魔臣宰相に事前に情報をリークしているので、限りなくマッチポンプに近い状況ではある。
「俺たちのことは、後でちゃんと説明するし、危害を加えるつもりは本当に無いから、安心してほしい。それに、用事を済ませたら、すぐに帰ることも約束する。でも、その前に、まずは怪我人と病人の治療をさせてくれ」
そう言って、住民を見回すが、まだ誰も反応を見せない。
「別に大怪我や重病じゃなくても構わないぞ。放っておけば自然に回復する怪我でも、すぐに治るなら、その方が良いだろ? それとも、痛くて辛いのを我慢して、周りに迷惑を掛けるつもりか? この先、いつ、何が起こるか分からないのに、それでもいいのか?」
やむを得ず、俺がわざと不安を煽るような言い方をすると、恐る恐るという感じで、住民の中に手を挙げる者が現れた。
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