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ぼろぼろの集落に到着

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

 状況を一から整理すると、征龍候が反乱を起こした直後は、第三方面軍を中心とする魔王軍の本隊も、第二方面軍を中心とする独立派も、できることなら正面からぶつかり合うことを避けて、なるべく時間を稼ぎたいと考えていたはずだ。


 第三方面軍は、言うまでもなく、竜の巣との戦闘で大きな人的損失を出してしまったため、軍を再編しなければ、大規模な戦闘に対応できないから。


 第二方面軍は、地上で魔王軍の本隊とぶつかっても、勝ち目が薄いから。


 当初、征龍候は地上戦を回避するために、鬼人の島を独立派の拠点にすることで、魔王軍の本隊を否応なしに海戦に引きずり込むつもりだったようだが、その計画は(俺のせいで)既に頓挫している。


 また、ジェニオが鬼人の島を訪れたことにより、自らの計画が魔臣宰相に露見していると察した征龍候は、予定をかなり前倒しにして、行動を起こさざるを得なくなった。


 その結果、どちらも正面衝突はしたくないという奇妙な状況に陥ってしまったわけだが、時間の経過と共に不利になるのは、第二方面軍の方だ。


 時間が経てば、第三方面軍は軍の再編を終えて、逆賊と化した第二方面軍を、地上戦で討伐するための準備が整ってしまう。


 そこで、征龍候は、三つ巴の関係にある人類軍を味方に引き込むことで、戦局を一気に有利に傾けようとしたのだが――――残念ながら、その計画も(俺のせいで)頓挫している。


 こうなると、征龍候にできることは、第三方面軍が軍の再編を終えて動き出すまでの間に、何らかの対策を講じて、状況を変えることなのだが……。


(俺のせいで、第三方面軍はすぐに動いちまったわけだ)


『だいたい覇王丸さんのせいですね』


 なぜなら、俺がジェニオとアロガンに情報をリークしたことで、第二方面軍と人類軍が手を組まないことが、魔臣宰相の耳に入ってしまったからだ。


 しかも、人類軍は漁夫の利を狙って、静観の構えを見せている。


 となれば、魔臣宰相が取るべき行動は一つしかない。


 できるだけ早く、征龍候が次の一手を打つよりも先に、致命的な一撃を与えることだ。


 俺たちが到着した時、眼下のかつて集落だった場所は、見るも無残な廃村のように荒れ果てていた。


 建物は軒並み破壊されて、瓦礫の山になっている。竜の巣の襲撃を受けた集落との最大の違いは、死体が転がっていないことくらいだろう。


 集落の中心にある広場だったと思われる場所には、ボロキレで作ったようなテントが幾つも並び、生き残った(行き場の無い)多くの住民が、身を寄せ合っていた。


「これは……。結構、徹底的にやったみたいだな?」


「ま、親父ならこうするだろーな」


 わりと情け容赦のない攻撃の痕跡を見て、俺が意外に思いながら話し掛けると、ジェニオは逆に当然だと言わんばかりに、冷めた口調で返答した。


「どういうことだ?」


「本意か不本意かは別として。落とし前は必要だってことだよ。こいつら、理由はどうあれ、自分の意思で「魔王を裏切った」わけだからな」


 そう言うと、ジェニオはさっさとワタシの背中から飛び降りて、一足早く、地上に着地してしまった。


「くそっ。ジェニオのくせに、なんだかカッコいい降り方しやがって……!」


「カッコいいかどうかは、重要ではないと思いますけど」


 冷静にツッコミを入れるライカの言葉を聞き流して、俺はジェニオの近くに着地するように、ワタシに指示を出した。


「できるだけカッコよくな」


「カシコマリ」


 ワタシは、俺の無茶な要求を快諾すると、空中を滑るように音もなく滑空して、集落の上を旋回しながら、最後はジェニオの前にふわりと着地した。実に優雅だ。

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