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二十二歳(編集済み)

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

「それじゃあ、その言葉の意味を知ることってできないのか?」


「できないことはないと思います。えっと……。僕のデバイスでは、そもそも神代文字を入力できないので、写真に撮って、画像を読み込んでみますね」


 そう言うと、山田はしばらくの間、ああでもない、こうでもないと、自分のデバイスを睨み付けながら悪戦苦闘していたが、やがて、言葉の翻訳に成功したようだ。


 だが、正しく翻訳された言葉の意味を知って、俺はますます混乱することになる。


「……うん? 何ですかね? これ」


 山田は呆気に取られたような表情で、翻訳された言葉の意味を読み上げた。


「なんか「編集済み」って、書いてあるみたいですけど」


「……は? どういうことだよ?」


「そんなの、僕が知りたいですよ」


 俺と山田は、間の抜けた表情で見つめ合い、意味不明な翻訳に首を傾げた。


(というか、年齢の横に「編集済み」って……。思い切り、改ざんしてないか?)


 嘘を吐くどころか、根拠となるデータを書き換えているので、戸籍を改ざんしているようなものだ。詐称よりもタチが悪い。


 問題は、データを編集したのか、誰なのかという点だ。


 マキちゃんが犯人なら、十一人目の勇者の正体は、ほぼマキちゃんで決まりだろう。


 だが、どこからどう見ても、善人でしかないマキちゃんの正体が、十一人目の勇者だとは、とても考えにくい……というか、真っ先に自分の年齢を改ざんしている時点で、そいつはもう悪人とは呼べないような気がする。


 それに、十一人目の勇者が悪人だというのも、俺とマルマルの決め付けでしかないのだ。


「マジで意味が分からん」


「本当ですね」


 山田も、俺の発言に同調して頷いたが、そもそも、山田は間違った情報を前提にしているので、未来永劫、謎が解明されることは無い。


「最後の勇者は、なぜ、こんなメモ書きを残したんでしょうか?」


「残してないぞ」


「え?」


「いやいや。マジで、なんで残したんだろうな?」


 謎だな、謎ですねぇ、と。


 山田を出口の無い迷宮に放置したまま、俺はひとまず結論を先送りにした。


     *


 更に数日後。俺はオース海峡の監視を、マキちゃん、フィオレ、ベルレノの三人に任せて、ひとまずトレンタ大陸に戻った。そして、拠点の港町で仲間と合流し、簡単に情報共有を済ませると、今度はライカとヒナの二人を連れて、一路、魔王領に向かった。


 ワタシの背中に乗って、障害物の無い空をどんどん北上する。


 最近になって気づいたことだが、トレンタ大陸はオット大陸と比べると全体的に気温が低いようだ。特に魔王領の辺りまで北上すると、上空では肌寒さを覚えることもあった。


「二人とも、寒くないか? もっと、引っ付いてもいいぞ」


 そう言って、ライカとヒナを両手で抱きかかえると、二人は抵抗することもなく、俺の腕の中にすっぽりと収まった。


 ちなみに、スピード重視のナルヒェンと違って、ワタシとオレサマの背中は揺れが少なく、背中を無風状態にしてくれるので、かなり快適だ。さながら送迎用のリムジン。背中の上であぐらをかいても、まったく問題が無いくらいだ。


「最近、寒くなってきたのかな?」


「ユミルさんが、もう少ししたら本格的に寒くなるって言っていました」


 妊娠疑惑が浮上してからというもの、ユミルさんと一緒にいることが多くなったライカが、トレンタ大陸の気候について教えてくれた。


 トレンタ大陸は広大ではあるものの、北部は寒冷な気候であり、魔王軍でいうところの本国にあたるエガリテルヴァンジュ王国の大部分が、この気候に属しているらしい。


「北の方は、海が凍っちゃうくらい寒くなるみたいです」


「ふーん。オット大陸は、結構、温かいのにな」


 この辺りのことも、魔王軍が支配地域で暮らす人々を農奴として働かせていることと、関係しているのかもしれない。もし、魔王軍が戦争をはじめた動機の一つに、温暖で肥沃な土地を得ることがあったのだとすれば、魔王領をすべて放棄させるような戦後処理をしてしまうと、問題の解決どころか「ふりだしに戻る」になってしまう恐れがある。終戦が、次の戦争の火種になるかもしれないのだ。


「……戦争を終わらせるっていうのも、大変なことだなぁ」


「本当にそうですね」


 俺とライカがしみじみと呟くと、不安を打ち消すように、ヒナが声を張り上げた。


「大丈夫です! 覇王丸様が、きっと解決してくれます!」


「お前……。もしかして、俺のいないところでも、事あるごとにそういうことを言っているんじゃないだろうな?」


「大丈夫です!」


「何も大丈夫じゃないんだよなぁ」


 そんなことをされたら、俺の肩にのしかかる世間の期待が、どんどん膨れ上がってしまう。


 俺はお仕置きの意味を込めて、ヒナの頭を抱えてぐりぐりと圧迫したが、ヒナは嬉しそうにキャアキャアとはしゃぐだけだった。

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