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お膳立て

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

「こいつなんて、人として駄目なところの方が多いぞ」


「それは分かっている」


「……お前ら、何なの?」


 唐突にディスられたジェニオが、憮然とした様子で呟く。


「竜の群れに砦を襲撃され、九死に一生を得て……。自分たちは何のために戦っているのか、分からなくなってしまった。多くの同胞が命を失い、肉親である弟が負傷してもなお、攻撃してきた竜に対して、畏れの感情を抱くことはあっても、怒りの感情が湧くことはなかった。同じように竜から攻撃を受けて、助けを求め、避難してきた者たちを見た時に、自分たちと何が違うのかと疑問に思ってしまったからだ」


 竜から見れば、人間も魔人も、どちらも同じ種族だというのに。


 人間同士で争い、優劣を決めて、支配し、搾取して、不必要に怒りと憎しみをばら撒いて、何になるのだろうか、と。


 アロガンは改めて、戦争の意義について考えたそうだ。


「戦争のきっかけや、原因は、たしかにあったのだろう。動機も、戦う意義も、当時はあったに違いない。だが、もう十分なはずだ。百年が経過し、戦争の当事者は殆どがいなくなった。我々は多くの戦闘に勝利して、領地を得て、名誉を回復した。これ以上は、相手を不当に貶めるための戦いだ。恨みつらみが世代を超えて、やがては自分の肉親に返ってくる」


 この世界そのものが地獄になってしまう、と。


 アロガンは危機感を覚えたらしい。


「俺も今では、この戦争をできるだけ早く終わらせるべきだと考えている。――――だが、残念なことに、このままでは戦争は終わらない」


「ああ」


「陛下が止まらない限り、父をはじめとする、古い世代の魔人は止まらないだろう」


 必要なのは、分かりやすい形での決着だ。


 そのためには、誰かが魔王を止めるしかない。


 魔王が止まれば、古い世代の魔人たちも、きっと使命から解放される。


 呪いが解けるように、役割を終えて、次の世代に未来を託すことができるだろう。


 百年も続いた戦争の清算は、前途多難な道のりになるだろうが、希望があるだけマシだ。


「残念ながら、そのような大役は、俺には荷が重い。――――もし、お前にそれができるのであれば、どうか、成し遂げて欲しい」


 この世界に、平和と救済を。


 人類に、未来への一歩を。


 よろしく頼む、と。


 そのような言葉を並べ立てて、アロガンは本国へ帰って行った。


「……何? お前、そんな壮大な使命を背負ってんの?」


「そんなわけないだろ」


『ありますよっ!』


 山田のツッコミを無視して、俺はジェニオの問い掛けに対して、首を横に振った。


     *


 征龍候を追い詰めるために、俺たち……というかオット大陸の人類国家が仕掛けた第一手は、共闘の申し出を断ることだった。


 これは、多分、征龍候にとっては予想外の展開だったと思われる。


 現在、魔王軍と人類軍の戦争は、魔王軍の本隊から第二方面軍が離脱したことにより、三つ巴の状態になっている。


 そして、魔王の気性を考えれば、魔王軍がどちらか片方の敵と手を結ぶことはあり得ないので、第二方面軍と人類軍が結託すれば、戦況をかなり有利に進めることができるのだ。


 オット大陸の人類国家にとっても、百年も続く戦争の終結――――しかも、魔王討伐という形での決着は、長年の悲願であったはず。各国の統治者は、当代で偉業を成し遂げた名君として、歴史に名を残すことになる。


 終戦後には、放棄された広大な魔王領を、戦勝国である人類国家が分割管理(事実上の植民地化)するという、十分な見返りも提示した。


 反旗を翻したとはいえ、第二方面軍(元・魔王軍)と手を組むことで、国内の支持を失うことがないように、戦争反対を標榜して「平和のために共闘する」という分かりやすい大義名分まで用意したのだ。


 正に、ありとあらゆるお膳立てが整っていたと言える。

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