共同作戦
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「だいたい、理解した。この件は、一刻も早く閣下にお伝えする必要がある。必ずしも朗報というわけではないが……。それでも、判断材料が多いに越したことはない」
「あ、ちょっと待ってくれ」
予定を早めて今日中に出発しようと、意気込みはじめたアロガンを、俺は慌てて制止した。
「まだ、話は終わっていないんだ。ここまでは報告で、ここからは提案がある」
「提案?」
「いろいろ考えたんだけど、それなりの確率で、征龍候を出し抜けそうな作戦を思いついたんだ。だから、お前らが、それに乗らないかなと思って」
怪訝な顔をする二人に、俺は通販番組の司会のような営業スマイルで話し掛けた。
「征龍候を出し抜けるって……本当かよ?」
「……それが本当なら、話だけでも聞いておきたいところだが」
「勿論、聞くだけならタダだから、聞いてくれよ」
なんなら、今から話すことを、魔臣宰相と共有してもらっても構わない。
この作戦を実行することで最も得をするのは、魔王軍の本隊なのだから。
「お前らも征龍候みたいに、魔王軍を裏切るんだ。――――戦争反対を掲げてさ」
「……はあ?」
「……正気か?」
アロガンとジェニオは、今日一番の呆れ顔で、俺を見た。
*
翌日から、征龍候を罠に陥れるための作戦が始まった。
一晩、腹を割って話し合った結果、アロガンは当初の予定を変えることなく、兵士を連れて本国に帰り、ジェニオはこのまま砦に残ることになった。
「執務室の資料は好きに使え。俺がここに戻ることは、恐らく、もう無いだろう」
「ああ。そうさせてもらう」
「これが、今生の別れにならなければいいが」
「縁起でもない。失敗したら逃げるぞ、俺は」
「それならば、大丈夫そうだな。お前が本気で逃げるなら、誰も追いつけないはずだ」
父上を除いては、と。
アロガンとジェニオは兄弟ならではの軽口を言い合い、固い握手を交わした。
「覇王丸」
「ん?」
突然、アロガンから名前を呼ばれて、俺は驚きのあまり、少しだけ、間の抜けた返事をしてしまった。アロガンからまともに名前を呼ばれたのは、この時が初めてだったからだ。
「お前の作戦、閣下には伝えておく」
「おう。よろしく頼む」
「……」
「何だよ」
アロガンが無言のまま、じっと睨み付けてきたので、俺は憮然として言い返した。
「やんのか? てめぇ」
「こらっ」
チンピラのごとく因縁をつけたところで、マキちゃんから背中を叩かれた。頭は届かないので、背中を叩いたのだろう。これがゲンジロウ爺さんなら、刀の鞘で後頭部を小突かれていたところだ。
「ちゃんと話を聞いてあげなきゃ駄目でしょ!」
「だって、睨んでくるから」
「睨んだわけではないのだが……。そう見えたのなら、すまない」
アロガンはバツの悪い顔をして謝り、仲裁してくれたマキちゃんにも、礼を言った。
「別に感謝をしているとか、そういうことではないのだが……。お前と会ったことが、一つのきっかけになったことは間違いないと思ってな。そのことを伝えたかった」
「きっかけって? 何のだよ?」
「一言で言ってしまえば、価値観が変わった」
アロガンは特に感慨深そうにするわけでもなく、淡々と答えた。
「今までは、戦争をすることの意義など考えず、父や兄に倣って、自分の役割をまっとうすることだけを考えていた。そのせいで、才能に恵まれた弟に対抗心を抱くこともあった。今にして思えば、恥ずかしい限りだ」
「そんなの、人それぞれだろ」
少なくとも、ジェニオが優れているのは個の戦闘力であり、軍人として見た時にアロガンの方が優れている点など、幾らでもあるはずだ。
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