立ち回りの弱点
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次回の更新は明日です。
だが、この「立ち回り」こそが、魔王軍の――――ひいては魔王の最大の弱点なのだ。
魔王には、一切の打算が無い。復讐に囚われている者は、視野が狭くなり、良くも悪くも、思考や行動がワンパターンになるからだ。
魔王は絶対に、裏切り者を許さない。
魔王は絶対に、百年前の恨みを忘れない。
これらの前提がある限り、魔王軍は敵対するすべての勢力と、常に戦わざるを得ないのだ。第二方面軍の独立をいったん容認することも、人類軍と一時的に停戦することも、魔王の取る選択肢としては「あり得ない」のである。
「……このままでは、我々には敗北する未来しか残されていない」
「慌てるなって。最後まで話を聞けよ」
暗く沈んだ声で、絶望的な未来予想をするアロガンを、俺は軽い口調で元気づけた。
「心配しなくても、あんたが考えている最悪の展開にはならないぞ」
「どういうことだ?」
「結論から言うと、人類軍は第二方面軍とは組まない。話し合いの結果、そう決まった」
「……なぜだ?」
まったく理解ができない、と。
アロガンは納得のいかない様子だ。
「厳密に言うと、第二方面軍からの申し入れに対して、のらりくらりと回答を先延ばしにする感じだな。敵対するわけではないけど、協力もしないみたいな」
そのような、どっちつかずの対応が取れるのは、第二方面軍にとっては、人類軍と「敵対しない」だけでも十分なメリットになるからであり、一方、人類軍から見れば、魔王軍が裏切り者の第二方面軍と和解することは「あり得ない」と、断言できるからだ。
俺は、呆けた顔をする二人に、先日の国際会議の内容を掻い摘んで説明した。
「そんなわけで、少なくとも、当面の間、人類軍からの横やりは入らないから、安心して第二方面軍と戦ってくれよ。お前らの親父にも、そう伝えてくれ」
「マジかよ……。お前、どうして、わざわざ会議に参加してまで反対したんだ? 俺が言うのも変だけど、人類軍にとっては良い話だろ」
「まあな」
何か裏があるんじゃないのか、と。
疑惑の目を向けてくるジェニオに、俺は曖昧に頷いた。
「裏があると言えばあるし、無いと言えば無いんだよな」
「はあ? なんだそりゃ?」
「隠すのも面倒だから、はっきり言っちまうけど、魔王軍と第二方面軍が潰し合ってくれるのが、人類軍にとっては一番ありがたいんだよ。だから、そのことを指して「裏があるんじゃないか」と言っているなら、何も反論はない」
「……マジでぶっちゃけやがったな」
いっそ清々しいわ、と。
ジェニオは呆れ半分、納得半分の表情で頷いた。
「これが裏の理由だな」
「今、ぶっちゃけたから、引っ繰り返って、表の理由になったぞ」
「表の理由は、別にあるんだよ」
それは、表と裏ではあるが、ジェニオが言うような本音と建前ではなく、人類軍としての本音と、俺の個人的な本音と言うべきだろう。
「やっぱり、何と言うか、征龍候と組むことに抵抗があるんだよな。共闘したところで、どうせ、いつかは敵対すると思うし。こっちとしては、最後に倒す敵が魔王ならすっきりするけど、征龍候だとモヤモヤすると思うんだ。大嫌いな食べ物をどうしても食べなきゃいけないなら、早めに食っておきたいというか、最後まで残しておきたくないんだよな」
「やべーな……。それ、めちゃくちゃ分かる」
ジェニオは困惑した様子で、頭を抱えた。
「兄貴は、分かるか?」
「分かるも何も……。要するに、お前たちは征龍候のことが嫌いなのだろう?」
「まあ、そうだけど」
ほぼ同時に頷く俺とジェニオを見て、アロガンはため息を吐いた。
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