耳寄りな情報
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明日です。
「それで? お前ら、何しに来たんだよ。こんな世間話をしに来たわけじゃないんだろ?」
「ああ。そうだな。ここには、情報提供に来たんだ」
そういう意味では、もし、一日遅かったら、ジェニオをはじめとする第三方面軍の残党は、砦からいなくなっていたのだから、本当にぎりぎりセーフだった。
「まずは……そうだな。先日の報告からだな。おかげさまで、竜の説得には成功したぞ」
「そうらしいな」
まるで事の顛末を知っているかのような口ぶりで、ジェニオは頷いた。魔臣宰相の安否についても知っていたので、もしかしたら、既に本国と、ある程度の情報交換を済ませているのかもしれない。
「知ってたのか。この前、ここは陸の孤島だとか、そんなことを言っていたくせに」
「生存報告くらいはするだろ。戻ってきた伝令の兵士から、だいたいの経緯は聞いた」
「それじゃあ、今、魔王軍がどういう状況になっているのかも、知っているんだな?」
「……」
ジェニオは、俺からの質問にはすぐに答えず、アロガンを見た。
「兄貴。これ、どう思う? 俺、カマを掛けられているのかな?」
「知らん。だが、既に人類軍の耳に入っていたとしても、不思議ではない」
二人が声を潜めて、堂々と(隠す気ゼロの)内緒話を始めたので、
「魔王軍の内輪揉めのことなら、耳に入っているぞ」
俺が会話に割って入ると、二人は「やっぱりか」と納得したように頷いた。
「内輪揉めなんて、可愛いもんじゃねーよ。征龍候の野郎が、裏切りやがったんだ。せっかく島で集めた独立派の証拠が、全部無駄になっちまった」
「向こうも、それに気が付いたから、証拠を突き付けられる前に、先手を打つ形で裏切ったんだろうな」
「やることが姑息なんだよ。しかも、竜の巣侵攻を引き合いに出して、無意味な戦闘で多くの犠牲者を出したとか言って、親父や魔王を批判しているらしいからな」
信じられねぇだろ!? と。
ジェニオはかなりご立腹の様子だ。
内情を知っている者からすれば、たしかに、そのとおりだろう。
「竜の巣を攻めろって、魔王に言ったのは、てめーだろうが!」
「気持ちは分かるけど。末端の国民は、そんなこと知らないだろ。証明もできないし」
「そこがムカつくんだよ! 絶対に分かっていて、やってやがるんだ!」
「まあ、そうだろうな」
俺も、ジェニオと同じことを考えたので、気持ちはとても良く分かる。
そして、その怒りは、これから何倍にも膨れ上がるはずだ。
「それで、その第二方面軍についてなんだけどさ。征龍候からオット大陸のすべての人類国家に対して「俺たち戦争反対派だから、世界の平和のために一緒に魔王を倒そう」って、共闘のお誘いがあったみたいなんだよ」
「は?」
「……なんだと?」
案の定、ジェニオとアロガンは、目が点になった。言葉の意味は分かっているのに、脳が理解を拒んでいるような、そんな感じだ。
「ふ……ざけんなよ! いったい、どういうことだよ!」
「俺に怒鳴られても困る」
ややあって、感情を爆発させたジェニオとは対照的に、
「……それは、マズいな」
アロガンが深刻な表情で呟いた。こちらは、冷静に状況判断ができているようだ。
「それで、人類国家の対応は?」
「共闘して魔王を倒す方向で、話がまとまりかけていたみたいだな。つい先日、オット大陸で大規模な国際会議があった」
「……」
アロガンの表情が、見る見るうちに曇っていく。
それはそうだろう。三つ巴の戦いになった時に最も注意すべきことは、敵同士が結託して、二対一の構図にならないようにすることだ。互いの戦力が拮抗していればいるほど、結託された時点で敗北が濃厚になるので、そうならないように、狡猾に、巧妙に立ち回らなければならない。
評価、ブックマーク、いいね、感想などをもらえると嬉しいです。




