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洗いざらい吐く

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

「まさか、年齢詐称してんのか?」


「しししししてないよっ!? そもそも、誰にも年齢を教えてないんだから、詐称も何もないでしょ!?」


「それもそうだな」


 黙秘している相手に「嘘を吐くな」と言うのはおかしい。


「洗いざらい吐いちまえよ」


「なんで犯人の取り調べみたいなことを言うの!? だいたい、失礼だよ! 女の子に年齢を聞くのは、スリーサイズを聞くのと同じようなものなんだよ!?」


「じゃあ、スリーサイズも吐いちまえよ。どうせ、全部、詐称してるんだろ?」


「何一つ、公表してないよ!」


 言いがかりはやめろ、と。


 マキちゃんが険しい表情をして、俺の鼻を摘まんできたので、俺も対抗して、マキちゃんの鼻を摘まみ返した。


「覇王丸くんはねぇ。デリカシーが無いんだよ」(鼻声)


「そんなもん、無くたって、生きていけるからな」(鼻声)


『二人して、何をやっているんですか……』


 お互いの鼻を摘まみながら、有利な体勢を奪い合う俺とマキちゃんを見て、山田が呆れ声で呟いた。


『このまま茶番が続くのなら、ちょうどいい時間なので、僕、ランチに行ってきてもいいですか?』


(ご自由に)


『じゃあ、小一時間ほど席を外しますね』


 それでは、と言い残して、山田との通信が切れる。


「ちっ。今、俺の担当が呆れて、昼飯を食いに行ったぞ」(鼻声)


「真面目で良いじゃない。私の担当は、有事の時以外は定時連絡に来るくらいだよ」(鼻声)


「え。そんなものなのか?」(鼻声)


 思わず、マキちゃんの鼻から手を放す。


 てっきり、守護天使は四六時中、自分の担当の勇者に付きっきりだと思っていたので、マキちゃんの回答は意外だった。


「それじゃあ、マキちゃんの担当、今はいない?」


「今日は、まだ来ていないねー。覇王丸君が昨日のうちに予定を教えてくれていたら、朝からいたと思うんだけど」


「そりゃ、悪かったな。ゲンジロウ爺さんに何も言われなかったら、今日は一人で行くつもりだったんだ」


 俺は謝ると同時に、あれこれと思案を巡らせた。


 ――――もしかして、これは千載一遇のチャンスではないだろうか?


 二人の守護天使が、たまたま同時に離席しており、正に今は、監視の目が無い状態。


 このチャンスを逃せば、もう深夜に寝室を訪れるという夜這いまがいのことをしない限り、十一人目の勇者についてマキちゃんと話す機会は得られないかもしれない。


 ――――だが、本当に話してしまっても、良いのだろうか?


 マキちゃんは、容疑者の一人なのだ。


 もし、マキちゃんが十一人目の勇者で――――もし、俺たちの敵だとしたら、今、この時の選択が、後々、致命的な結果を招いてしまう恐れがある。


「……」


「な、なに? 顔をじっと見たりして……」


「…………いや。無いか」


「え?」


 出会ってから今までの、マキちゃんの行動を見ていれば分かる。


 マキちゃんが、敵や、悪人であるはずがない。


「無い、無い。あるわけないって」


「何がっ!?」


 突然、まじまじと顔を覗き込まれて「無い」と連呼されたマキちゃんは、なぜかショックを受けてしまったらしく、涙目になって俺を睨み付けた。


「さっきから何なの!? 馬鹿にされているみたいで、嫌な感じなんだけど!?」


「ごめんごめん」


 俺は馬鹿らしくなって、マキちゃんを抱き寄せると、頭をわしゃわしゃと撫でた。


「ひやぁぁぁ! やめてっ! 髪の毛が絡まっちゃうから!」


「悪かった。もう、二度とマキちゃんを疑ったりしないから」


「何の話!?」


「この先、俺はずっとマキちゃんの味方だってことだよ」


 俺が感謝と謝罪の気持ちを込めてそう伝えると、マキちゃんはぴたりと抵抗を止めて、俺の顔を覗き込んだ。


「え? それって、もしかして、プロポーズ……」


「そんなわけないだろ」


「いったい、何なの!?」


 訳が分からない、と。


 マキちゃんが抱き締められた体勢のまま、ボディブローを連打しはじめたので、俺は(痛くも痒くもなかったが)ギブアップして、事情を説明することにした。


 勿論、担当の守護天使には内緒にしてほしいと、念を押した上でのことだ。

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