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容疑者

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

『お前と、殺人犯と、マキちゃんの三人の年齢が、どう考えても、近すぎる』


(ちょ、ちょっと待ってくれ)


 まさか、自分が容疑者になるとは、想定していなかった。


 ヒナが十歳、俺が十七歳、マキちゃんが二十代後半だと考えれば、誤差はあってもだいたい十年に一人くらいの間隔だと思っていたのだが……。


(最後の勇者って、何歳なんだ?)


『二十一歳だな』


(……二十代なのかよ)


 若い。というか、若すぎる。


 たしかに、ゲンジロウ爺さんは「若かったと思う」などと言っていたが、ゲンジロウ爺さん目線の「若い」なので、普通に中年のおっさんだと思っていた。


 というか、二十一歳では、俺との年齢差がたったの四つだ。


 四歳差では、さすがに「十年に一人」とは言えない。誤差で押し通すのも、無理がある。


(いや、待て。ということは、つまり、最後の勇者が偽者でしたってオチなんじゃないか?)


 そのように考えれば、すべての辻褄が合う。


 だが、マルマルは簡単に納得しなかった。


『マキちゃんの年齢も近いんだ』


(何歳だよ?)


『二十二歳』


(……は?)


 嘘だろ? ありえない、と。


 俺は思わず声を荒げてしまった。


 俺が十七歳、最後の勇者が二十一歳、マキちゃんが二十二歳。


 十年に一人しか生まれてこないはずの勇者が、五年間で三人も生まれてしまっている。


(そんなわけあるか! マキちゃんが二十二歳とか、あり得ねーよ!)


 そもそも、マキちゃんは社会人のはずだ。二十二歳では、まだ大学生になってしまう。


『いやいや。短大とか、専門学校とか、あるいは高卒なら、普通に働いているだろ』


(だとしても、二十二歳なら、まだ、結婚を焦るような年齢じゃないだろ)


『それはまあ、そうだな』


(独身って言われるだけで仮死状態になるんだぞ?)


『嘘吐くんじゃねーよ!』


 そんなわけあるか、と。


 マルマルはあっさり嘘を見破ったが、そんな嘘を吐きたくなるくらい、マキちゃんが独身であることにコンプレックスを抱いているのは本当だ。誰が何と言おうと、あの切羽詰まり具合は、二十二歳のものではない。二十代後半のものだ。


(俺は絶対に認めないからな)


『なんでだよ……。殺人犯の二十一歳は、すんなり受け入れたくせに……』


 マキちゃんの年齢にだけ異様な執着を見せる俺に、困惑した様子のマルマルだが、


『……あれ?』


 不意に、何かに気が付いたように、声を上げた。


『よく見たら、マキちゃんの年齢の欄に、何か書いてあるな』


(何かって? 何が書いてあるんだ?)


『だから、何かだよ。名前の横だったら、転生前の名前と、転生後の名前なんだけど。年齢の横だからなあ……。多分、注釈だと思うけど……読めない文字で書いてある』


 注釈とは、文章や言葉に対する簡単な補足説明のことだ。


 つまり――――


(年齢の横だろ? 二十二歳「ではありません」って書いてあるんじゃないか?)


『いや。違うだろ』


(それなら「願望」とか「笑」って書いてあるんじゃないか?)


『酷すぎるだろ!』


 マキちゃんに何の恨みがあるんだよ! と。


 マルマルは声を荒げて、俺に説教をした。


『そうじゃなくて、問題なのは、たとえ殺人犯が偽者の勇者だとしても、お前とマキちゃんの年齢が近すぎることについては、何も説明が付かないってことだよ』


 言われてみれば、たしかにそのとおりだ。


 マキちゃんが二十二歳だとすると、俺との年齢差は五歳であり、依然として、勇者は十年に一人のペースで生まれてくるという前提を、歪めてしまっている。


 それからしばらく、俺とマルマルは頭を捻って考えてみたが、結局、正解とおぼしき結論を導き出すことはできなかった。


『――――この件は、いったん保留にした方が良さそうだな。名前の横の注釈の意味が分かるまでは、どうにもならないと思う』


(なんだか、モヤモヤするな)


『諦めろ。注釈の意味については、俺の方でも色々と調べてみるから』


(ああ)


 俺も、山田にそれとなく聞いてみた方がよいだろうか? 勘繰られるのは面倒だが、山田はアホなので、適当に誤魔化せるかもしれない。


『明日からも、色々と動き回るんだろ? ゆっくり休め。……あと、一応、マキちゃんのことを、怪しまれない程度に、観察してみてくれよ』


(……まぁ)


 それじゃあな、と。


 別れの言葉を告げるマルマルに生返事をして、頭の中の通信は切れた。


 存在するはずのない十一人目の正体が、いったい何なのかは、分からない。


 勇者なのかも、偽者なのかも。


 味方なのかも、敵なのかも。


 ただ、その容疑者の中に、仲間のマキちゃんや、自分自身が含まれていて、潔白を証明することができないという状況に、もどかしさを感じた。


 結局、その日は、頭のモヤモヤを解消することができず、一睡もできなかった。


 それにも関わらず、体調が優れないなどということはなく、俺の化け物じみた体は、万全に近い状態まで回復していた。

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