お前ら
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次回の更新は明後日です。
(そうなると、俺たちの把握していない、偽者が紛れ込んでいるってことか?)
『普通に補欠要員がいるだけかもしれないけどな。……担当に聞けば、何か分かるのかなぁ』
(やめとけ、やめとけ)
ハッキングという完全にアウトな行為をしている以上、バレたらどんなペナルティがあるか分からないのだ。軽率な行動は、厳に慎むべきだと思う。
(担当の守護天使が、お前と一蓮托生の覚悟を決めているレベルの味方なら、話は別だけど)
『そこまでではないかな……。悪い奴ではないけどさ。こうして、自分の仕事部屋を使わせてくれているし。PCも買ってくれたし』
(わりと、自分の担当とは、ビジネスライクな関係の勇者が多いみたいだな)
担当、相棒、コンビなど、耳当たりの良い表現はいくらでもできるが、結局のところ、勇者と守護天使の関係は、将棋の駒と棋士のようなものだ。山田たちは、外部から俺たちの行動を観測しているだけ。傍観者なのである。
『バレたら、PCを没収される可能性もあるから、話すのは止めておくわ』
(それが賢明だな。今、お前と連絡を取れなくなるのは、デメリットが大きい)
勇者の人数については、機会があれば、俺が山田に質問してもよいだろう。叩けば埃が出るマルマルとは違い、俺は叩かれても何も出てこない。
(しかし、厄介な問題が一つ増えたな……)
単なる勘違いや、補欠要員がいるだけなら、何も問題は無いのだが、俺たちの中に勇者ではないイレギュラーな存在が紛れ込んでいるとなると、話は変わってくる。
勇者のふりをした偽者が、何をしてくるか分からないからだ。
それに、山田も把握していない偽者が紛れ込んでいるとなると、その偽者を紛れ込ませたのは誰なのかという話にもなってくる。
山田の上司や、もっと上の地位にいる者の思惑が絡んでくる話になったら、下手に首を突っ込むことが藪蛇になる恐れもある。好奇心は猫をも殺すという諺があるように、余計なことを知りすぎた者の末路は悲惨なものだ。
(偽者の勇者といって、真っ先に思い浮かぶのは、やっぱり最後の勇者だけど……)
俺が、ゲンジロウ爺さんから聞いた最後の勇者の名前を伝えると、マルマルは地球にいた頃に、ネットニュースなどで最後の勇者のことを知っていたようだ。
『殺人犯が獄中で死んだっていう、わりとセンセーショナルなニュースだったからな。まさかそいつも勇者だとは思わなかったけど。というか、日本人が多すぎだろ』
(事の発端が、こっちの世界に生まれてくるはずの勇者が、何かの手違いで百年前から日本で生まれていたってことらしいからな)
座標設定が間違っていたとか、そのような話を、以前、山田から聞いたような気がする。
『そう考えると、俺たち、地球じゃなくて、こっちの世界に生まれてくるはずだったんだな。そいつも最初からこっちで生まれていれば、今頃、英雄だったのかもしれないのに』
最後の勇者と直接会ったことの無いマルマルは、その生い立ちに同情するような発言をしたが、すぐに何かを考え込むように沈黙した。
『――――なあ。お前、さっき、勇者は十年に一人くらいの間隔で生まれてくるって言ったよな?』
(そうだな。多少の誤差はあるけど、だいたいの目安としてはそれくらいのはずだ)
『だとすると、数年の誤差を考慮しても、勇者同士の年齢が不自然に近すぎるグループがあるんだけど』
(マジで?)
俺はすぐに、マルマルの言わんとしていることを理解した。
なぜ、もっと早く、そのことに気が付かなかったのだろうか?
マルマルの言うことが本当なら、その不自然に年齢の近いグループの中に、イレギュラーな存在――――偽者が紛れ込んでいる可能性が高い。
最年少の勇者がヒナである時点で、百年間に十一人の勇者が生まれてくることは、あり得ないからだ。
イレギュラーな十一人目は、必ず「十年に一人」の間隔を、不自然に歪ませることになる。
(それ、誰だよ)
俺は、喜び勇んで問い掛けたが、
『お前ら』
(……は?)
マルマルの返答に、言葉に詰まってしまった。
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