一人多い
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明日です。
(それ、バレたら絶対にマズいだろ。なんで、そんなことをしたんだよ)
『いや……。こっちの世界にも、動画サイト的なものがあるんじゃないかと思って探していたら、変な場所を見つけちまってさ』
(動機も含めて最悪じゃねーか)
『うるせーな。いいんだよ。それより、どう思う? 勇者が一人、多い件について』
マルマルは誤魔化すように、無理やり話題を元に戻したが、
(……どうって言われてもな)
俺としては、現状では、特に何も言うことがない。
(普通に考えれば、数え間違えとか、勘違いじゃないか? 実は十一人でしたっていう)
『でも、俺はたしかに十人って聞いたぞ? 何百人、何千人の中の一人ならともかく、十人と十一人を間違えるか?』
(そう言われると……。そんな気もするけど)
たしかに、十人くらいの人数なら、一人、二人、三人……と指折り数えれば、数え間違えることは無いだろう。まして、世界を救うかもしれない勇者の人数だ。どんぶり勘定で数えることなど、絶対にあってはならない。
ただ、絶対にあってはならないことでも、絶対に「ない」と断定することができないのも、また事実なのだ。ヒューマンエラーは、どんな場面でも起こり得る。
(お前が、同じファイルを重複してコピーした可能性は?)
『ないない。一度にまとめてコピーしたし、ファイルの名前も確認済みだ』
(それじゃあ、関係無い奴のファイルが紛れ込んでいた可能性は?)
『無関係な奴のデータを、勇者のデータと同じ場所に保管しておくか? それ、かなり杜撰だぞ』
ああ言えばこう言う……ではないが、俺が何を言っても、マルマルは納得しなかった。
どうやら、俺が、事態をわりと軽く見ているのとは対照的に、マルマルはかなり深刻に受け止めているようだ。
(無関係じゃないとしたら……何だ?)
例えば、その十一人目は、こちらの世界に転移や転生をしなかった余り物――――早期に脱落者が出た場合の補欠だとか。
あるいは、無関係ではないが勇者でもない、イレギュラーな存在だとか。
そういう可能性が、あるのだろうか?
『補欠か偽者ってことか?』
(ああ。勇者って、だいたい十年に一人くらいの割合で生まれてくるらしいんだけど。今まで最年少だと思っていたヒナよりも年下の勇者がいて、そいつだけは転生しなかったとか)
高校生の俺よりも、一つ上の世代の勇者がマキちゃん、一つ下の世代の勇者がヒナだとすると、ヒナよりも後に生まれた赤ちゃんの勇者がいても、おかしくはない。そして、赤ちゃんだからという理由で、その勇者が控えに回されたとしても、それは自然なことだ。
だが、マルマルは即座にその仮説を否定した。
『残念だけど、その線は無いぞ』
(なんでだよ?)
『言っただろ。個人情報の記載されたファイルだって。年齢がゼロ歳の勇者はいなかった』
マルマルが確認したところ、最年少は十歳のヒナだったらしい。
(というか、それなら、そのファイルを見れば、何か分かるんじゃないか?)
『それが、名前と年齢くらいしか解読できなかったんだよ。生きたまま転移した勇者の名前が日本語で書かれている以外は、見たことない文字が使われていてさ』
マルマルが言うには、その文字はこの世界で使われている言語とも違うそうだ。
『どっちにしても、翻訳の奇跡の効力は、読み書きには適用されないから、文字だけ見ても、何も分からないんだけどな』
(そうだな)
普段、俺たちは翻訳の奇跡の効力により、何の苦労もせずに、異世界の言葉でコミュニケーションを取れている。
ただ、翻訳の奇跡の効果は「話す」と「聞く」にしか適用されないため、本を読んだり、手紙を書いたりすることはできないのだ。
もっとも、「話す」と「聞く」には、人間の言葉以外にも適用されてしまうので、人間並みに知能の高い竜とも会話ができてしまうという副次効果もあったりする。一長一短ではあるものの、トータルでは圧倒的にメリットの方が大きいチート能力だと言えるだろう。
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