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わりと普通に犯罪

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

(ユミルさん、お前のいる所で話しちゃったのか)


 これをうっかり……と評価するのは、酷と言うものだろう。赤ちゃんや人形やぬいぐるみに話し掛けることなど、別に珍しくもない。


(まあ、仕方ないか。独り言みたいなものだし)


『違うね。あれは、ユミルさんの「二人目がほしい」というメッセージに違いない』


(だとしても、それを一人目の息子には言わねーだろ)


 何というか、一から十まですべての発言がキモすぎる。


 こいつが成長して性的に有害な生き物になってしまう前に、事故に見せかけて息の根を止めてしまう方が、長い目で見た時、両親や社会のためになるのではないだろうか?


(お前、もしかして、地球にいた頃は性犯罪者だったりする?)


『しねーよっ! 俺はプレミアム会員だったんだぞ!』


 性欲なんか見放題の動画で発散するわ! 高校生は無料のサンプルでも見てろ! と。


 マルマルは前世を引き合いに出してマウントを取ってきたが、はたして、それは本当にマウントを取れているのだろうか(むしろ敗北しているのではないか)と、疑問に思ってしまう。


(まあ、いいけどさ。……それで? 今日は何の用だよ? もし、くだらない用件だったら、ぶっ殺すぞ)


『こわっ。言い方、キツくない? 俺、赤ちゃんだぞ?』


(いいから、本題を言えよ)


『ちぇ。……ちゃんと、真面目な用件だよ』


 マルマルはつまらなそうに呟くと、


『お前、地球からこの世界にやって来た勇者が、全部で何人いるのか、知ってるか?』


 俺がまったく想定していなかった切り口から、質問を飛ばしてきた。


     *


(勇者の人数?)


 てっきり、マルマルの身の回りで、報告しておいた方が良いかなレベルの事件でも起きたのだろうと思っていた(実際、緊迫した様子ではなかった)のだが、勇者の人数を聞かれるとは予想外だった。


 だが、俺はその質問に対する正解を知っている。


(十人だろ?)


 以前……と言っても、もう、かなり昔のことになるが、山田の上司から、自分以外の勇者に関する情報を、ヒントのような形で教えてもらったことがあるのだ。


(そういえば、中間報告みたいなことを、やらなくなったな)


 山田の上司が、勇者としての貢献度をランキング形式で発表し、順位に応じたご褒美という形で情報をくれたのは、俺が覚えている限りでは、過去に一回、あるいは二回だけだ。


 あのイベントには、何の意味があったのか――――


 もしかしたら、旅の序盤に、行動の指針となるようなヒントを、サービスで与えてくれたのかもしれないし、あるいは、単なる気まぐれだったのかもしれない。


 いずれにしても、当時の俺にとっては、自分以外の勇者を探し出して協力することが、魔王討伐という壮大な目的を達成するための一番の近道だった。それは間違いない。


 だから、勇者の人数についても、俺はしっかり記憶していた。


 地球から、この世界に送り込まれた勇者は、俺も含めて全部で十人。


 それぞれ、生きたまま転移した勇者と、転生して生まれ変わった勇者がいたはずだ。


『だよな。俺もそう聞いていたんだけどさ……』


 そこで言葉を区切ると、マルマルは声を殺して、ぼそぼそと小声で話しはじめた。


『実は、ひょんなことから、勇者の個人情報が記載されたファイルを入手したんだよ』


(は?)


『ファイルの名前を見て、ピンときてさ。それで、安全を確認してからコピーしたんだけど、後で数えたら、全部で十一人分あるんだよ』


(どういうことだよ?)


 というか、話を聞く限り、結構、ヤバい橋を渡っているような気がするのだが。


(よく分からないんだけど……。お前、もしかして、ハッキング的なことをしてない?)


『てへっ』


(てへっ、じゃねーだろ)


 それは、普通に犯罪行為だ。


 前世で、マルマルはPC関係(多分、SE)の仕事をしていたらしく、PCを自作したり、そのPCを使って(守護天使と同じ方法で)俺に連絡を取ってきたりと、そっち方面のかなり専門的な知識と技術を持ち合わせている。


 だが、ハッキングまでできるとは、思っていなかった。

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