墓穴
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明日です。
「ソノヨウニ考エルト、今回、征龍候ノ取ッタ行動ハ、杜撰ト言ウカ、軽率デアッタヨウニモ思エルノダガ」
「実際、そうだと思うぞ」
この点は多くの者が勘違いしているところなのだが、征龍候という人物は決して深謀遠慮な知恵者ではない。
こちらの対応が間に合わなくなるくらい早く「次の一手」を打ってくる、典型的な「拙攻は巧遅に勝る」タイプなのだ。迷いの無さや、本人の陰湿な性格も相まって、効果的な手を打たれているように錯覚してしまうが、その実、十手先、二十手先を見据えているわけではないので、こちらが粛々と最善手を返し続ければ、必ず最後は詰むようになっている。
実際、征龍候は十分な時間を掛けて準備を整えてから、本国から独立しようと画策していたのに、独立派の存在がバレそうになったため、決行を前倒しにせざるを得なくなった。
拠点にするつもりだった鬼人の島を失ったため、数的有利を作り出そうと人類軍に共闘を呼び掛けているが、今度は自らの仕掛けた「所属不明の竜による襲撃事件」を口実に、援軍の派遣を保留されてしまっている。
ツギハギだらけの計画は、既に至る箇所で歪みを生み出しているのだ。
「征龍候の取った行動が全部裏目に出て、自分の仕掛けた罠で自滅するように、今、こっちも動いているところだ」
征龍候には申し訳ないが、俺は十手先とは言わないまでも、ある程度、先のことを考えて、作戦を立てている。最終的に勝ちを拾うためならば、途中でわざと苦戦したり、痛い目を見たりしても、すべて「作戦のうち」だ。
だが、征龍候には、それができない。最初から最後までずっと「予定通り」でなければ気が済まないから、すぐに計画を修正するし、変更するし、部下や影武者に責任を押し付けて、見切りを付ける。
そんな征龍候にとって、自分の作戦が仇になって窮地に追い込まれることは、この上もない屈辱に違いない。
「まあ、楽しみにしておいてくれよ。征龍候を、奈落の底に突き落としてやるからさ」
これで終わりじゃねーぞ、と。
悪い顔をして、心の底から楽しそうにほくそ笑む俺を見て、ヨキは「ソウカ」と戸惑いがちに頷いたが、
『悪人には、極悪人をぶつけるのが一番なんですね』
山田は歯に衣着せぬ言い方で俺をディスったため、後で制裁されることになった。
*
その日の夜、あれから目を覚ましたライカとヒナを連れて拠点に戻り、ベッドで横になって体を休めていると、久しぶりにマルマルから連絡があった。
マルマルは、俺と同じ地球出身の勇者だ。ただし、転移ではなく、死んでから生まれ変わる転生によって世界を渡ったため、肉体は赤ちゃんなのに、精神年齢はおっさんという、とてもキモい存在になっている。
普段は正体を隠して本物の赤ちゃんのふりをしているため、時間を持て余しているらしく、夜になると山田と同じ方法で、俺に連絡を取ってくることがあるのだ。
ちなみに、俺とマルマルがこの方法で連絡を取り合っていることは、お互いの守護天使には秘密にしている。
『――――あ、繋がった。もしもーし。今、起きてるかー』
(起きてるぞ)
『今、いい? 嫁さんとエロいことしてる?』
(してねーよ)
第一声がそれかよ、と。
俺は文句を言おうとしたが、ふと、ある可能性に気が付いた。
(お前、もしかして、ライカのこと知っているのか?)
『知ってるぞ。ユミルさんが、俺と二人きりの時に、教えてくれたからな』
(やっぱりか)
ユミルさんはマルマルの母親だ。ライカが体調の変化に気が付いて、最初に相談した大人の女性でもある。
どうやら、マルマルはユミルさんを通じて、ライカが「妊娠しているかもしれない」という情報を知る機会があったようだ。
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