のらりくらり
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「愚カナ人間メ! 我ノ助ケヲ断ッタコトヲ、後悔スルガイイ!」
「なんで、俺が悪いみたいになってんだよ」
ナルヒェンの捨てゼリフに、俺は憮然として言い返したが、実際のところ今回の作戦では、ナルヒェンが活躍する機会は無いだろう。
なぜなら、作戦の舞台が海になるからだ。
第二方面軍からの共闘の申し入れを拒否することが決まった後、当然のように「じゃあ、どうするのか?」という議論になったわけだが、俺が各国の代表に提案したことは「のらりくらりと回答を保留すること」だった。
具体的には、協力する気はあるが、ある事情により、トレンタ大陸に援軍を送り込むことができないと、第二方面軍の使者に対して回答するように提案した。
ある事情とは、オース海峡に出現する竜のせいで、軍の大量輸送ができないというものだ。
この理由ならば、征龍候は納得するしかない。
なにしろ、ラハムに指示を出して、その配下の竜たちにオース海峡で襲撃事件を起こさせた犯人が、征龍候なのだから。
現在では、ラハムが死亡したことにより、魔王軍と直接的な繋がりの無かった配下の竜たちは行方をくらませており、オース海峡における竜の襲撃事件は、既に沈静化している。
だが、そんなことは、竜と会話できない第二方面軍には、確かめようがない。
もしかしたら、配下の竜たちが、ラハムの指示を律儀に守り続けているのかもしれない。
あるいは、単に人間が嫌いだから、人類軍の船にちょっかいを出し続けているのかもしれない。
少なくとも、思い当たる節のある征龍候には、それらの可能性を頭ごなしに否定することはできないだろう。こっちが「竜が出る」と言っている以上、人類軍の協力を取り付けたい第二方面軍は、その言い分を信じるしかないのだ。
「人類軍と共闘できなければ、第二方面軍は、魔王軍の本隊とサシで戦うことになるからな。海戦なら勝てるかもしれないけど、多分、地上戦では無理だ」
だからこそ、征龍候は四方を海に囲まれた鬼人の島を、独立派の拠点にしていたわけだが、現在はそこも奪い返されてしまっている。トレンタ大陸で魔王軍の本隊と戦わざるを得ない征龍候にとって、人類軍との共闘は必要不可欠なのだ。
「人類軍ガ共闘ニ前向キナ姿勢ヲ見セレバ、依頼スルマデモナク、第二方面軍ハ問題解決ニ動キ出ストイウコトダナ?」
「そういうこと」
これも役割分担のうちだ。
征龍候が、地上での戦闘を人類軍に押し付けるつもりならば、海で発生している問題については、第二方面軍が解決しなければならない。
人類軍から「竜の襲撃事件」を理由に援軍の派遣を断られた第二方面軍は、早晩、オース海峡の安全を確保するために、行動を起こすだろう。
つまり、つい先日までは、竜の巣が担っていたオース海峡のパトロールを、今度は第二方面軍がすることになるのだ。
「私ハ、ソコヲ待チ伏セシテ、攻撃スレバヨイノダナ?」
「そうだ」
「船ヲ沈メテシマッテモ、ヨイノダロウカ?」
「いいんじゃないか? 派手に暴れれば、もしかしたら、征龍候本人が出張ってくるかもしれないからな」
正直、そうなる可能性は、わりと高いのではないかと考えている。並の戦力ではヨキを撃退することは不可能だと分かれば、より強い戦力が投入されるのは必然。もしかしたら、征龍候本人ではなくても、実力上位の影武者がやって来るかもしれない。
いずれにしても、こっちは第二方面軍の戦力を削ることができるというわけだ。
「モシ、第二方面軍ガ動カナカッタ場合ハ、ドウスルツモリダ?」
「その時はその時で、高みの見物だよ。こっちとしては、第二方面軍と魔王軍の本隊が内輪揉めで潰し合ってくれるのが、一番ありがたいからな」
「ナルホド。ドチラニ転ンデモ、人類軍ハ得ヲスルトイウコトカ。良ク考エラレテイル」
意地の悪い作戦だ、と。
ヨキは納得した様子で、頷いた。
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