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竜の巣の今後

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

 その後、竜の巣までライカとヒナを迎えに行くと、竜王の治療は無事に終わっており、後は安静にしていれば、自己治癒だけでも怪我が完治するところまで、状態は回復していた。


「良かったなあ。体を貫かれるほどの大怪我だったのに。やっぱり、体がデカいと体力と生命力があるんだな」


「ソうでスね。毎日、傷口が膿まないように治癒魔法を掛け続けてくれた、ソこにいる二人と神官の女性たちのおかげでス」


 竜王は日当たりの良い湖畔に体を横たえながら、静かに頷いた。その視線の先では、竜たちが作った即席の草のベッドの上で、ライカとヒナがすやすやと寝息を立てている。二人とも、霊薬を使った治療を終えた後は、まともに歩くこともできないほど疲弊していたらしく、心配した竜たちが慌てて大量の草を運んできたのだそうだ。


 まるでお姫様扱い……というか、竜からここまで丁重に扱われたことなど、俺ですら一度も無い。本当に感謝されているようだ。


「一時は、本当に助からないんじゃないかと思ったもんな。ナルヒェンたちに遺言みたいなことまで言っちゃって」


「お恥ずかシいかぎりでス」


 俺が冗談を言って「がはは」と笑うと、竜王の隣に付き添っていた四聖竜の全員から、咎めるような視線を向けられてしまった。


「口ヲ開ケレバ、不謹慎ナコトシカ言ワンノダナ。オ前ハ」


 モースが呆れたように言ったが、以前ならガチギレされていても不思議ではないレベルの発言なので、モースの俺に対する態度も、かなり柔らかくなったと言えるだろう。


 ちなみに、怒りのあまり我を忘れて、魔王軍だけではなく、竜王を信仰している人々まで攻撃してしまったモースは、当面の間は謹慎して、人前に姿を現さないことになったらしい。


 人間よりも遥かに長寿だと思われる竜の「当面の間」がどれくらいなのかは分からないし、多くの人の命を奪ったにも関わらず、謹慎で済ませてよいのかという問題もあるのだが、そもそも人間の法や価値観で竜を裁こうとすること自体、ナンセンスでもある。今まで人間に狩猟されてきた動物が、人間を訴えることができないのと同じことだ。


 それに、俺や、魔王軍の兵士や、勿論、人類軍の兵士だって、戦争をしている以上、大なり小なり、同じ罪を背負っていると言える。


 だから、俺はこの問題には、これ以上、踏み込まないことにした。ありもしない正解を探して、思考実験のような泥沼に足を突っ込むのは、真っ平ごめんだ。


「それで、ちょっと今後のことで、皆に相談したいことがあるんだけど、いいかな?」


 俺は気を取り直して、閑話休題とばかりに、今日、竜の巣を訪れた本命の用件を伝えることにした。


「――――というわけなんだけど」


 どうだろう? と。


 俺が判断を仰ぐと、竜王は目を閉じて、しばらく考え込んだ。


「……私は、竜の巣の今後のことは、ここにいる者たちに任セようと思っていまス。どうスるかは、ヨキが決めれば良いかと」


「だってさ」


 以前から、何となく予感はしていたことだが、先日の魔王との戦闘を最後に、竜王は一線を退き、隠居するつもりのようだ。俺からの申し出を受けるかどうかの最終決断を、鶴の一声で決めるのではなく、四聖竜に一任した。


 ヨキに話を振ったのは、今回の俺の提案を受けた場合、主に動くことになるのが、ヨキだからだろう。

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