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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
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リリエル

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

 その日の夜。


 絶対に呼ばれないと思っていたら、山田の仕事部屋に呼び出された。


「なんだ……? あの野郎、死ぬ覚悟ができたのか?」


 俺が殺意を漲らせつつ室内を見渡すと、山田がいつも座っているオフィスチェアがくるりと回転し、見たことのない生き物が姿を現した。


「あ! 本当にやってきた! すごいすごい!」


 オフィスチェアの背もたれに全身が隠れてしまうほど小柄な体躯。いわゆる碧眼に白い肌。


 見たことのない生き物の正体は、ライカを金髪に変えたような外見の少女だった。


「大きい! うわあ……すごく大きい!」


 俺の高身長がお気に召したらしく、ちょろちょろと足元にまとわりついてくる。


「何だ。抱っこしてほしいのか?」


「いいの!?」


「いいよ」


 そう言って、俺がひょいと抱きかかえると、少女は鼻息を荒くして大はしゃぎをした。


「すごい! ほら、天井に手が届きそう!」


「そうだな」


「なんだか、空を飛んでいるみたいじゃない!?」


「俺はいつもこの高さだから」


「いいなあ!」


 俺は少女を抱きかかえたまま、仕事部屋をぐるぐると何周もする羽目になった。


 ようやく満足してもらえたところで、お互いにソファに腰かける。


「で、お前は誰だ?」


「あ、申し遅れました。私は山田タロエルの妹でリリエルと申します」


 リリエルと名乗る少女は、いきなり畏まって礼儀正しく頭を下げた。


「妹?」


「はい」


 山田に妹がいるとは初耳だ。


「なんで、妹がここに?」


「はい。兄が、私を生贄に捧げることで怒りを鎮めてはもらえないかと」


「山田……そこまで堕ちたか」


 自分が助かるために、まさか身内を人身御供に差し出すとは。


 多分、ユニットバスあたりに本人が隠れて様子を窺っているのだろうが、そんな見え透いた茶番に付き合ってやる義理は無い。


 リリエルはテーブルに両手を付くと、深々と頭を下げた。


「そんなわけで、私を好きにして構いませんのでどうか怒りをお鎮めください」


「祟り神みたいに言われても困るんだけど……そこまでの覚悟があるならいいだろう」


「え?」


「兄貴の代わりに、お前をぶん殴って水に流してやる」


「ええええ!?」


 まさかの死刑執行宣告に、リリエルは驚愕の表情を浮かべた。


「どうした? 兄貴に騙されたのか? 残念ながら、俺は子供でも本気で殴るぞ」


「う、あ、そ、その……」


 俺が立ちあがって指の関節をボキボキと鳴らすと、リリエルは顔面蒼白になった。


 つい先程までは目を輝かせていた俺の高身長も、今では恐怖の対象になっているようだ。


「顔面に覇王丸強パンチか、尻に覇王丸強キックか、好きな方を選ばせてやる」


「ゆる……許して……」


「お望みどおり一発で許してやる。――――さあ、選べ」


「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」


 その時、ユニットバスのドアが開いて、俺の予想どおり、山田が飛び出してきた。


「魔王軍の指揮官を倒した技を妹に使うな! 死ぬわ!」


「妹を生贄に差し出したのはお前だろ」


「妹を殴るくらいなら僕を――――


「おらぁっ!」


「ぐへっ!」


 山田が最後まで言い終えるより先に、俺は渾身のビンタを叩きこんだ。


「お兄ちゃぁぁぁぁぁん!」


 変わり果てた姿で転がる山田に、リリエルが泣きながら駆け寄った。

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