世界の命運
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「もし……もしもだ。これは、もしもの話だが……」
それでもまだ、第二方面軍と共闘する路線を諦めきれない参列者が、口を開いた。
「後日、本当に遅れて、第二方面軍から共闘の呼び掛けが届いたとしたら、貴国はどのような判断をするのだろうか?」
「断ることになるだろう」
悩むどころか、思案する素振りさえ見せず、ウォルフは即答した。
「それは、なぜ……?」
「そんなことは、決まっている」
「ん?」
そう言って、ウォルフは近くに立つ俺の肩に手を乗せた。
「自分一人で正確な判断ができない時は、信頼できる者から意見を聞くだろう? 私にとっては、それが覇王丸だったということだ。人間の勇者として、最前線で魔王軍と戦い続けてきた男が「征龍候は信用できない」と言っているのだから、そんな相手からの共闘の申し出など、受けるはずがない」
「な……! 一国を背負う立場の貴殿が、国の行く末をそんなことで決めるというのか?」
「たしかに、我々は国を背負っているのだろう。だが、それを言うなら、勇者である彼は「この世界の命運」を背負っていることにはならないか? そんな彼の意見を尊重することは、おかしなことだろうか?」
「さっきから、俺に全部の責任を押し付けようとしてないか?」
俺が憮然とした表情で文句を言おうとすると、それを遮るように、議場から豪快な笑い声が上がった。
(なんか、聞き覚えがあるような……)
「世界の命運か! たしかに、そのとおりだな!」
周囲の注目を一身に集めながら大声で笑う壮年の男は、ヴリント王国の国王ヴェンだった。
ヴェンとは、過去に一度だけ会ったことがある。会話の主導権を握ることを得意とする俺が、唯一苦手とする「ぐいぐい前に出てくるタイプのおっさん」だ。
「そういうことなら、ヴリント王国も第二方面軍との共闘には反対させてもらおう。余も、覇王丸のことは信用しているからな」
ヴェンのその一言で、議場の雰囲気と、議論の流れそのものが、劇的に変わった。とにかく押しの強い人物なので、相手をすると疲れるが、味方になると一気に頼もしくなる。
「他にも、同じ意見の者がいるのではないか? ――――なあ、兄者」
「……公の場で、気安い呼び方は止めてほしいのだが」
上機嫌な笑顔でヴェンに話し掛けられたラルフは、困ったように小さく咳払いをした。
「本来ならば、こういうことに私情を挟むべきではない。……だが、先代獣王撃退の件では、アルバレンティア王国も、勇者に助けられている。国内問題についても……」
「建前を並べなくとも、それ以前に義理の息子であろうが」
「……少し、黙ってくれ」
どうやら、ラルフもヴェンに対しては、苦手意識を抱いているようだ。
「しかし、そうだな。建前を並べるのは、止めにしよう。アルバレンティア王国も、覇王丸の意見に賛成だ。魔王軍との戦争において、最も大きな戦果を挙げている者の意見を、軽視することはできない」
「どうせ、兄者は最初から味方をするつもりだったのだろう?」
「……」
からかうようなヴェンの言葉を、ラルフがしかめ面でガン無視していると、
「そういうことなら、ザントブルグ王国も勇者様の意見に賛成します」
渡りに船とばかりに、会話の流れを引き継ぐ形で、ハミットが手を挙げた。
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