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世界の命運

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

「もし……もしもだ。これは、もしもの話だが……」


 それでもまだ、第二方面軍と共闘する路線を諦めきれない参列者が、口を開いた。


「後日、本当に遅れて、第二方面軍から共闘の呼び掛けが届いたとしたら、貴国はどのような判断をするのだろうか?」


「断ることになるだろう」


 悩むどころか、思案する素振りさえ見せず、ウォルフは即答した。


「それは、なぜ……?」


「そんなことは、決まっている」


「ん?」


 そう言って、ウォルフは近くに立つ俺の肩に手を乗せた。


「自分一人で正確な判断ができない時は、信頼できる者から意見を聞くだろう? 私にとっては、それが覇王丸だったということだ。人間の勇者として、最前線で魔王軍と戦い続けてきた男が「征龍候は信用できない」と言っているのだから、そんな相手からの共闘の申し出など、受けるはずがない」


「な……! 一国を背負う立場の貴殿が、国の行く末をそんなことで決めるというのか?」


「たしかに、我々は国を背負っているのだろう。だが、それを言うなら、勇者である彼は「この世界の命運」を背負っていることにはならないか? そんな彼の意見を尊重することは、おかしなことだろうか?」


「さっきから、俺に全部の責任を押し付けようとしてないか?」


 俺が憮然とした表情で文句を言おうとすると、それを遮るように、議場から豪快な笑い声が上がった。


(なんか、聞き覚えがあるような……)


「世界の命運か! たしかに、そのとおりだな!」


 周囲の注目を一身に集めながら大声で笑う壮年の男は、ヴリント王国の国王ヴェンだった。


 ヴェンとは、過去に一度だけ会ったことがある。会話の主導権を握ることを得意とする俺が、唯一苦手とする「ぐいぐい前に出てくるタイプのおっさん」だ。


「そういうことなら、ヴリント王国も第二方面軍との共闘には反対させてもらおう。余も、覇王丸のことは信用しているからな」


 ヴェンのその一言で、議場の雰囲気と、議論の流れそのものが、劇的に変わった。とにかく押しの強い人物なので、相手をすると疲れるが、味方になると一気に頼もしくなる。


「他にも、同じ意見の者がいるのではないか? ――――なあ、兄者」


「……公の場で、気安い呼び方は止めてほしいのだが」


 上機嫌な笑顔でヴェンに話し掛けられたラルフは、困ったように小さく咳払いをした。


「本来ならば、こういうことに私情を挟むべきではない。……だが、先代獣王撃退の件では、アルバレンティア王国も、勇者に助けられている。国内問題についても……」


「建前を並べなくとも、それ以前に義理の息子であろうが」


「……少し、黙ってくれ」


 どうやら、ラルフもヴェンに対しては、苦手意識を抱いているようだ。


「しかし、そうだな。建前を並べるのは、止めにしよう。アルバレンティア王国も、覇王丸の意見に賛成だ。魔王軍との戦争において、最も大きな戦果を挙げている者の意見を、軽視することはできない」


「どうせ、兄者は最初から味方をするつもりだったのだろう?」


「……」


 からかうようなヴェンの言葉を、ラルフがしかめ面でガン無視していると、


「そういうことなら、ザントブルグ王国も勇者様の意見に賛成します」


 渡りに船とばかりに、会話の流れを引き継ぐ形で、ハミットが手を挙げた。

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