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獣王の説明 四

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

「落ち着いて聞いてほしい。そもそも、ベスティアがオース海峡から魔王軍を駆逐したのは、自国の南側の安全を確保するためだ。北側で魔王軍と対峙している最中に、南から挟撃される事態だけは、避けなければならなかった。だから、オース海峡から魔王軍を排除し、その後、ここにいる覇王丸に依頼して、ザントブルグ王国の統治者を探してもらったのだが……」


 ウォルフがそうした理由は、主に三つある。


 一つは、獣人国がそのままオース海峡の周辺地域を統治しても、魔王軍の統治と同じくらい現地住民からの反感を買ってしまい、上手くいかない可能性が高かったから。


 一つは、先代獣王レグルスの時代に、魔王軍と同盟を組み、人類国家を壊滅に追い込んでしまったことに対する、罪滅ぼしの気持ちがあったから。


 そして、最後の一つは――――


「簡単に言ってしまえば、楽をするためだ。オース海峡にあるすべての港を管理するには、それなりの規模の部隊を、各港に派遣する必要がある。望まぬ形でこちらの負担が大きくなってしまうわけだ。だが、そんなことをするよりも、解放した地域を人類国家に返還し、自衛してもらう方が、手っ取り早いのではないか……と、考えたものでね」


「それならば……」


「だが、人類軍が第二方面軍と組んでしまうと、その前提は崩れてしまう」


 何かを言おうとした参列者の言葉を遮って、ウォルフは話し続けた。


「共闘するとなれば、人類軍にとって、第二方面軍は友軍になる。友軍には港を開放することもあるだろう。そうなると、オース海峡から上陸した第二方面軍の部隊が、ベスティアの南から攻めてくることもできてしまうわけだ」


 それでは、獣人国の南側の国境の安全が脅かされてしまう。


「つまり、ベスティアがオース海峡の港を管理するのは、国防上、やむを得ない措置なのだ。その点は理解していただきたい」


「そんなことは、我々がオース海峡の港を、第二方面軍に利用させなければよいたけの話ではないのかね?」


「ほう? そんなことが、本当にできると? 第二方面軍から「どちらの味方なのだ?」と詰められたら、何と答えるのかね? ――――まさかとは思うが」


 両方の味方だと答えるつもりではなかろうね? と。


 ウォルフはそこだけ語気を強めて、威圧するように尋ねた。


 正に緩急の妙だ。


 それまで穏やかに笑っていたウォルフが、突然、雰囲気を一変させたため、それに気圧される形で、議場は再び沈黙に包まれた。ウォルフに話し掛けた者も、すっかり委縮してしまい、何も返答できずにいる。


 政治的には各国のトップに君臨している参列者の大半が、揃いも揃って蛇に睨まれた蛙のように、ウォルフに気圧されている様子は、はっきり言ってしまえば、痛快である。所詮、権力者も人の子……ということなのだろう。それは、魔王も変わらないと思うのだが。


「信用というものは、時間を掛けて、少しずつ築いていくものだ。たまに、一瞬で他人の懐に潜り込んでしまう者もいるが、それは例外なので参考にしてはいけない。普通は、片手で武器を持ちながら、もう片方の手で握手をするところから始めるのだ。残念ながら、私たちはまだその段階にある」


 そのような状況で、相手に「武器を捨てろ」「背中を預けろ」と要求するのは、信用や信頼を得るのとは真逆の行動であると、ウォルフは説明した。


「まして、敵対する二つの勢力のどちらにも「自分は味方だ」と良い顔をする相手の、どこを信用するというのかね?」


(そりゃそうだ)


 そんなことをすれば、情勢がどちらか一方に傾くのを待っているだけだと思われて、どちらの勢力からも敵視されてしまいかねない。俗に言う「コウモリ外交」というやつで、有名な童話にもそんな話があったはずだ。

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