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獣王の説明 三

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

「――――ただし。今、私が話したことは、すべて、諸兄らが第二方面軍との共闘を蹴ることが前提の話になる。その点は、留意してもらいたい」


 最後に付け加えたウォルフの言葉に、各国の代表は困惑の表情を浮かべた。


「な、なぜ、そのようなことを?」


「魔王領と海を隔てている諸兄らの国と、陸で国境を接しているベスティアでは、置かれている状況がまったく異なるのだ。そのことについて、説明しよう」


 ウォルフはそこで一息ついて、さりげなく俺の方を向いた。


 ――――言いたいことを言ってしまってよいのだろうか?


 ――――勿論、遠慮せずに言ってくれ。


 そんなアイコンタクトをしたつもりになって俺が頷くと、ウォルフもまるで目が見えているかのように、口元に僅かな笑みを浮かべて、頷いた。


 ウォルフは真面目だが、堅物というわけではなく、むしろ誰かを驚かせたり、裏をかいたりする行動を、好む傾向がある。意外にも、悪戯好きなのだ。


「まず、これは大前提になるのだが、現時点でベスティアには、第二方面軍からの共闘の呼び掛けが届いていない。故に、ベスティアは今後も、第二方面軍と魔王軍の本隊を区別することなく、どちらとも敵対することになる」


「な……」


 ウォルフの告白に、参列者たちは絶句した様子だった。


 たしかに、呼び掛けが無いのであれば、それは共闘するしない以前の問題だ。


「まだ、書簡が届いていないだけなのでは?」


「その可能性は否定できない。ベスティアが内陸国だということも、ひょっとしたら関係しているのかもしれない。だが、それらはすべて可能性と憶測の話だ。実際には、魔王軍との同盟関係を離脱したベスティアを、第二方面軍が信用していないことが原因かもしれない」


 なにしろ、前獣王のレグルスは、単身で魔王領に潜伏して暴れ回っており、現獣王のウォルフは、獣人部隊を率いてオース海峡の周辺地域から魔王軍を一掃したのだ。


 しかも、魔王軍目線では、ウォルフとレグルスが連携している可能性も否定できないのだから、そのような状況で獣人国に共闘を呼び掛けるほど(そして、それを受けてもらえると考えるほど)征龍候の頭がお花畑とは考えにくい。


「いずれにしても、現時点で共闘の呼び掛けが無い以上、ベスティアとしては第二方面軍と敵対する以外の選択肢は無いことになる」


「様子を見て、もう少し待つという選択も……」


「ははは。残念だが、親しくもない相手から、遊びに誘われるのを待っているほど、私は呑気ではないものでね」


 結論を出すことを先送りさせようとする参列者の提案を笑顔で一蹴すると、ウォルフは更に衝撃的なことを宣言した。


「そういうわけで、ベスティアは第二方面軍と敵対するわけだが――――もし、人類軍が第二方面軍との共闘を受け入れるのであれば、非常に申し上げにくいことだが、オース海峡沿岸部にあるすべての港は、ベスティアの管理下に置かせてもらうことになる」


「は……?」


「勿論、それ以外の部分では、ザントブルグ王国の自治を認めるし、交易を制限するつもりもない。――――ただし、軍隊の上陸を認めることはできない」


「そんな馬鹿な!」


 参列者の一人が、横暴だと言わんばかりに声を荒げた。


「そんなことをされたら、我々はトレンタ大陸に魔王討伐のための地上部隊を送り込むことができなくなってしまうではないか」


「申し訳ないが、オース海峡以外の、第二方面軍の管理下にある港を使ってほしい」


「オース海峡を使えなくなることが問題なのだ!」


 たしかに、オット大陸とトレンタ大陸を最短一日で航行できるオース海峡の港を使えないとなると、大部隊を輸送するコストは跳ね上がるし、効率も悪くなる。


「それでは侵略と変わらないではないか!」


「我々と協力したいと言ったのは、嘘だったのか?」


 ウォルフが温厚な性格であることが分かったからなのか、非難の言葉が議場を飛び交った。


 だが、ウォルフは平然としたものだ。俺と同じで、戦えば勝てる相手(口先だけの相手)の言葉など、怖くも何ともないのだろう。

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