切り札登場
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次回の更新は明後日です。
「私自身、突然、トレンタ大陸に戻ることになったので、自分のことで手一杯と言いますか。――――ああ、でも、トレンタ大陸に戻ってから、沢山の人と話す機会があったのですけど、魔王軍に対する暗くて重い感情みたいなものは、感じることがありました。だから、魔王軍と組んだら反発があるというのは、そのとおりなのかもしれません」
俺が不利になるどころか、むしろ俺の援護射撃をしてくれたハミットは、最後に下座にいる俺を見て、何かを思い出したようだ。
「――――あ、そういえば。ザントブルグ王国の領地は、獣人国と隣接しているのですけど、昔、獣人国が魔王軍と同盟関係にあったので、魔王軍だけじゃなくて、獣人国に対する感情も好意的ではないんですよね」
(こいつ、露骨にアシストしてきたな)
純粋な善意なのか、それとも貸しを作ったつもりなのかは分からないが、ハミットの口から重要なキーワードが飛び出したので、俺は後を引き継ぐように、口を開いた。
「ちょっと、いいか? 今、獣人国って言葉が出てきたから言うけど、第二方面軍と組むことによって、その獣人国との関係も、大きく変わることになる。ついでに言えば、竜の巣との関係も」
「それは、どういうことだ?」
「獣人国や、竜の巣との関係が悪化するってことだよ」
ラルフの質問に、俺が当然のように答えると、議場は再び静まり返った。
「この件に関しては、俺よりも適任者がいるから、今からそいつに説明してもらおうと思うんだけど……ここに呼んでもいいか?」
「――――大森林の勇者は、このように言っているが、どうだろうか?」
そう言って、ラルフはゆっくりと周囲を見回したが、反対意見を述べる者はいなかった。
「では、その者の入室を許可する」
「ありがとう」
俺は感謝の言葉を述べて、後ろを振り返り、前に立つ兵士に合図を送った。
「先に言っておくけど、多分、皆、驚くと思う。でも、危険なことは何一つ無いから、そこは安心してほしい」
「安全に関しては、余も保証しよう」
ラルフの発言を聞いて、各国の参列者が「知っていたのか?」とでも言いたげな顔で後ろを振り返ったが、よくよく考えれば、ラルフはホスト国の国王なのだから、知っていて当然だと思い直したのか、すぐに視線を元に戻した。
程なくして、大広間の扉がゆっくりと開く。
その向こう側に立っていた人物の姿を見て、
「っ!?」
「――――っ!」
俺が危険は無いと忠告したにも関わらず、議場は一瞬で緊張感に包まれた。
扉の向こう側に立っていたのは、三人の獣人。
一人はハウンド。もう一人はオルツ。
そして、二人に手を引かれて、室内に足を踏み入れた人物は、両目を真一文字に斬られた古傷と、獅子のタテガミが特徴的な獣人。
獣人国ベスティアの現在の統治者、獣王ウォルフだった。
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