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覇王丸の主張 八

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

「ベルレノの故郷の島を襲ったのは、他でもない第二方面軍なんだ。しかも、何年も前のことじゃなくて、つい最近のことだぞ。この時点で、征龍候が本当に戦争を終わらせたいと思っているのか、疑わしいんだけど……。その時の攻撃で、ベルレノは国王だった父親を喪っているんだ」


 俺の言葉を受けて、周囲の視線が一斉にベルレノに向けられる。


 ベルレノは毅然とした態度で視線を受け止めようとしたが、


「うう……」


 堪えきれずに、瞳からポロポロと涙が零れ落ちた。


 もし、これが演技であれば、ベルレノは稀代の女優ということになるのだが……。


 残念ながら、これは素の反応なので、俺としては嫁を泣かせてしまったという後ろめたさと罪悪感で、胸が一杯になってしまった。


「……ごめん。辛いことを思い出させちゃったな」


 小声で呟き、労わるようにベルレノの頭を撫でると、俺は更に話を続けた。


「同じように、第二方面軍のせいで家族を喪った人が、トレンタ大陸には大勢いるんだ。そんな人たちが、いきなり「第二方面軍は味方だ」なんて言われても、納得してくれるわけがないだろ? もし、そんなことを言われたら、トレンタ大陸の人たちは、第二方面軍が人類の味方なんじゃなくて、オット大陸の人類軍が「魔王軍の味方」なんだと考えるぞ」


 当然、そのような不信感を抱かれた状態での統治が、円滑に進むはずがない。


「そんなことは……」


 俺に質問を投げ掛けてきた参列者は、何かを言い返そうとしたが、重くなってしまった場の雰囲気を、自分の発言で変えることはできないと判断したようだ。


 何も言わずに、言葉を飲み込むと、自分に集まってしまった視線から逃れるように、周囲をきょろきょろと見回して――――


「おお、そうだ。ハミット殿下は、どうようにお考えですかな? ザントブルグ王国の新たな統治者として、是非、意見をお聞きしたい」


 事もあろうか、ハミットに発言をバトンタッチした。


(よりにもよって、ハミットかよ)


 恐らく、ハミットがトレンタ大陸にある人類国家の統治者だから、援護射撃をしてほしくて話を振ったのだろうが、人選としては極めて不適切だと言わざるを得ない。


「私の意見ですか?」


 案の定、指名されたハミットは、困ったような顔をして首を傾げた。


「意見と言われましても……。私は、つい最近までキドゥーシュプカの大聖堂で修道女として暮らしていましたから。どちらかと言えば、オット大陸で暮らす人たちの感覚に近いと思うので、何とも言えないですね。実感が無いというか、ピンとこないというか」


(そりゃそうだ)


 あまり緊張しているようには見えないハミットの回答を聞いて、俺は納得して頷いた。


 ハミットは幼少期にお家騒動に巻き込まれており、そのことが原因で、ザントブルグ王国が魔王軍(厳密には獣人国)に滅ぼされる前に、オット大陸に亡命している。ハミット自身は、魔王軍から直接的な被害を受けたわけではないのだ。


 また、家族に関しても、お家騒動が原因で死亡したのか、魔王軍の侵攻を受けて死亡したのか、ハミットは把握していないだろう。


 だから、ピンときていないというハミットの言葉は、本当のことなのである。


 同じ一国の代表でも、自国の利益を第一に考える狡猾さや強かさ(言い換えれば、統治者としての自覚や心構え)を、ハミットはまだ持ち合わせていない。


 年齢的に若すぎること。


 統治者として経験不足であり、為政者としては素直すぎること。


 これらの理由から、同意を求めて話を振る相手として、ハミットは不適切なのだ。


 というか、そもそもハミットは俺の味方なのだから、たとえ質問の意図を正確に汲み取っていたとしても、俺が不利になることを言うはずがない。

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