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覇王丸の主張 六

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

「一つ、確認したいんだけど。第二方面軍からの共闘の申し入れって、それぞれの国に個別に届いたのか? それとも、人類軍全体に宛てた申し入れが、一つだけ届いたのか?」


「内陸国を除き、港のある国には、それぞれ書状が届いている。無論、だからと言って、内陸国に共闘を呼び掛けていないわけではない」


 俺の問い掛けには、ラルフが答えてくれた。


「それじゃあ、この会議に先んじて、第二方面軍の使者と具体的な話を個別に進めている国はあるか?」


 いたら手を挙げてくれ、と


 俺は呼び掛けたが、誰も手を挙げなかった。議場は不自然に静かになり、全員が他人の表情を窺っているように見える。


「それじゃあ、交渉はしていないけど、今現在、第二方面軍の使者が国内に滞在しているって国は?」


 今度は、数人が控え目に手を挙げた。


 だが、どの国も「この会議の結論が出るのを、待たせているだけ」や「船の寄港を許可しただけ」などと、取って付けたような言い訳で、後ろめたいことが無いことを強調した。


「先程から、何を言いたいのだね?」


「我々の中に他国を出し抜こうとしている者がいるとでも言うつもりか?」


 さすがに、むっとしたような言葉を浴びせられてしまうが、これは仕方ないだろう。痛くもない腹を探られるのは、誰だって不愉快なはずだ。


 痛い腹を探られるのは、尚更、不愉快だと思うが。


「ごめん。気を悪くしないでくれよ。ただ、せっかく使者がやって来たのに、戦争が終わった後のことを、何も話していないのだとしたら、不自然かなって思ってさ」


「不自然とは?」


「第二方面軍からすれば、自分たちだけでは魔王を倒せないから、何が何でも人類軍と組みたいわけだよな? それなのに、共闘の見返りについて、何も話さないのはおかしくないか?」


 まさか、平和を愛する正義の心だけで、無償の協力を惜しみなく提供し続けるという国が、この中に一国でも存在するのだろうか? そんなことは、絶対にあり得ない。


 国と国との関係は好き嫌いの感情だけで決まるものではない……とは、先程、彼らが自分たちで口にした言葉だ。


 勿論、綺麗事が一切不要というわけではないから、平和のためとか、正義のためという建前や大義名分は、必要だろう。


 では、本音の部分は何かと言えば、それは「協力する見返り」になるのだ。


 そして、現状、第二方面軍が差し出せるもの――――交渉の材料になりそうなカードは「魔王領の放棄」以外には、あり得ない。


「戦争が終わった後、トレンタ大陸の統治ってどうなるんだ? 今じゃトレンタ大陸の大半が魔王領なんだろ? まさかとは思うけど、そのまま第二方面軍が統治し続けるのか?」


「それはない」


 ラルフが、誰よりも先に回答した。


 この話をすることを、ラルフには事前に伝えてあるので、俺が台本どおりに話を進められるように、自然な形で会話の相手役を買って出てくれたようだ。


「魔王を倒して戦争が終わるのであれば、当然ながら、それは人類軍の勝利であり、魔王軍の敗北という形になる。敗戦国が、他国から奪い取った領土を失うことなく、そのまま保持し続けるなどという話は、聞いたことが無い」


「でも、共闘するなら、第二方面軍は敗戦国にはならないよな?」


「そうだな。厳密には、我々と共闘することで、それ以前に犯した罪が不問になる――――敗戦国や戦犯としての諸々の責任を免れると言うべきだろう。裏を返せば、第二方面軍が得る利益は、それだけで十分ということになる」


 ラルフの言葉に、他の参列者もそのとおりだと、口々に賛同した。

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