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覇王丸の主張 五

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

「勘違いしないでほしいけど、別に危機感を煽っているわけじゃないんだ。さっきの状態なら押し負けると言っただけで、勝てないとは言っていないだろう?」


 議場が軽くパニックになりかけていたので、俺が沈静化を図ると、全員の咎めるような視線が、俺に向けられた。勿体つけるな、結論を言え、と。今にも言われそうな雰囲気だ。


「それでは、君は魔王に勝てるのかね?」


「勝てる。さっきの状態よりも、更に魔力の出力を上げれば、魔王を逆に抑え込んで、無力化できるはずだ。実際、一度はそうやって、後はトドメを刺すだけみたいな状況に持ち込んだんだけど、その時は魔臣宰相に邪魔された」


 だから、魔王討伐を達成するためには、誰の横やりも入らない状況で、魔王と一対一で戦う必要がある。それができれば、次は勝てるはずだ。


「その時の魔王が、本気を出していなかった可能性はないのかね?」


「それは無いと思う。戦ってみて分かったことだけど、魔王は感情の制御が下手くそなんだ。タガが外れると、怒り狂って暴走状態になる。それだけ人類のことを深く恨んでいるってことなんだろうけど」


 だから、魔王が生きている限り、魔王軍と人類軍が和睦することはあり得ないし、一度、感情のタガが外れた魔王が、手加減した攻撃をするということもあり得ない。


「そんな暴走している状態の魔王を、一度は抑え込むことができたんだ。だから、俺もかなり無理をすることになるけど、次、同じような状況になれば、確実に勝てる」


 ただし、魔王が更なる進化を遂げて、パワーアップしていなければ……の話ではあるが。


 そんな、万が一の可能性については言及せず、俺が次回の戦闘における勝利を確約すると、議場はようやく落ち着きを取り戻した。


 だが、ここでまた議論が振り出しに戻ってしまう。


「だが、そういうことであれば、尚更、第二方面軍と連携して、確実に魔王を討伐すべきではないかね?」


 ある参列者の発言に、周囲からも賛同の声が上がった。


「だから、それだと征龍候の思う壺なんだよ。良いように利用されて、こっちだけが大きな損害を出すことになるんだぞ? 下手をすれば、やっとの思いで魔王を倒した直後に、裏切ってくるかもしれない」


「裏切るかもしれない……というのは、君の主観だろう? だが、第二方面軍と共闘することで、魔王討伐が容易になるのは、客観的な事実だ。相手のことが信用できないというのなら、裏切りの可能性に留意しつつ、逆に利用してやればよいのではないかね?」


「君は若いから分からないだろうが、国と国との関係は、好き嫌いの感情だけで決まるものではないのだよ」


(ちっ……。偉そうに)


 魔王に勝てると分かった途端、急に反論を口にしはじめた参列者を見て、俺は内心で舌打ちをした。


 一筋縄ではいかない、と。


 昨日、ラルフから言われたとおりだ。


 決まりかけていた話を、現場の意見で引っ繰り返すのは、やはり容易ではないらしい。


 ここで「征龍候と組むのなら、俺は動かない」と言ってしまうことは簡単だし、ぶっちゃけそれだけで議論は終わってしまうのだが、それは最後の手段だ。俺が、我が儘を一方的に押し通す形になってしまうと、当然、周囲の反感を買うし、最終的に俺の味方をしてくれるだろう人たちにも、迷惑を掛けてしまう。あくまでも第二方面軍と組むことのデメリットを説いて、納得してもらう方が良いのだ。


 そもそも、なぜ、各国の代表は、第二方面軍と共闘したがるのか? という疑問だが……。


 これについては、理由は明白というか、とても分かりやすい。


 彼らが何度も口にしているとおり、どちらか片方(今回は第二方面軍)と組む方が、両方を敵に回すよりも、被害を小さく抑えられるからだ。それに、終戦や、戦後処理のことを考えても、予め第二方面軍と「話が付いている」方が、楽に決まっている。


 ――――だが、それだけではないはずだ。


 魔王軍との戦争が終わることで発生する、新たな問題。


 広大な魔王領を、誰が統治するのか? そこに利権が存在するのだ。

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