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覇王丸の主張 四

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

「……何だ、これは?」


「こんなことが……」


 魔力を知覚できる護衛は、一様に呆気に取られている。見れば、各国の代表の中にも驚愕の表情で俺を凝視している者が何人かいる。


 ロザリアが水の魔法を使えるくらいだから、為政者の中にも、魔力を感知できる程度には魔法を使える者がいるのだろう。


 ほんの数秒で、俺の吐き出した魔力は議場にいる全員の体を覆い尽くすほどになった。


(……こんなものか。これって、逆に吸い込むことはできるのか?)


 放出された魔力は俺の管理下にあるため、ある程度、意のままに操ることができる。


 それならば、溢れ出した魔力を、再び体内に取り込むことはできるのだろうか?


 試しに、覚醒状態を解除する直前に、魔力に干渉してみると、


(お。できた)


 意外にもあっさりと、放出した魔力は俺の体内に吸い込まれていった。水道の蛇口のように魔力を垂れ流すこともできれば、掃除機のように魔力を吸い込むこともできるようだ。


(吸い込むことで、覚醒の反動が小さくなったりは……しないよな)


 それに、この方法でうっかり魔王の汚染された魔力を吸い込んでしまったら、自爆というか自滅というか、とんでもない大惨事になってしまいそうな気がする。


 覚醒状態から、素の状態に戻った俺は、目の前のテーブルに両手をついて前傾姿勢になり、ふらつく体を無理やり支えた。


 今日、初めて会ったばかりの連中に、わざわざ覚醒の弱点を教えてやる必要はない。


「どうだった? 凄かっただろ?」


 護衛たちに尋ねると、全員が呆然自失の表情で、俺を眺めていた。今までに戦った敵からも、似たような視線を向けられたことがある。


 どうにもならない理不尽さを見せつけられて、自信を打ち砕かれた時の表情だ。


 もしかすると、彼等の目には、俺が化け物のように見えているのかもしれない。


(まあ、別にいいけど)


 はっきり言って、怖がられるのはムカつくし心外なのだが、そのおかげで俺の話の信憑性が増すのであれば、一概に悪いことだとも言えない。


「さっき、俺がどんな状態だったのかを、自分の仲間や雇い主――――魔力を知覚することのできない人に、説明してやってくれないか?」


 国際会議の場で、それぞれの国の代表の護衛を任されるくらいだから、彼らは全員が国内でトップレベルの魔法使いのはずだ。各国における魔法の第一人者の言葉ならば、たとえ魔力を知覚できない者でも、信じてくれるだろう。


 聞き耳を立てると、


「あの状態では、こちらは一切魔法を使うことができない」


「魔法使いでは勝てない。そもそも戦闘にならない」


 全員が驚くほど的確な状況説明をしていたので、さすがだなと、俺は感心した。


「だいたいの事情は把握したが……」


 情報共有の時間が終わり、護衛が再び後方に下がった後、参列者の一人が話し掛けてきた。


「戦闘時の魔王の状態が、先程の君と同じだったと言うのかね?」


「いや。さっきの状態だと、普通に押し負ける。戦闘時の魔王はもっと大量の魔力を垂れ流していたし、その魔力は触れるだけで致命傷になるようなヤバいものだった」


 俺が正直に回答すると、周囲は水を打ったように静まり返った。


「魔法が効かず、近づくことすらできないのでは、打つ手がないではないか」


「遠距離から弓矢で攻撃すればよいのではないか?」


 焦ったような声で、打開策を見出そうとする発言が飛び交うが、そんな方法は、至近距離で戦った俺が、真っ先に考えている。


「当たり前だけど、魔王は魔法使いなんだから、風の魔法くらい使えるぞ。だから、基本的に弓矢は当たらないと思った方がいい」


 それに、魔王が魔法を使うまでもなく、そのような遠距離攻撃はすべて魔臣宰相がシャットアウトしてしまうだろう。


 四大貴族の筆頭であり魔王の右腕――――魔臣フェデルタ。先の戦闘で深手を負ったはずだが、もし、無事に生き延びているのなら、魔王討伐の最大の障壁として、今後、人類軍の前に立ちはだかるはずだ。

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