金髪の男に言いがかりをつけられる
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「ゲンジロウ! これはどういうことだ!?」
この場に走って現れた金髪の男は、ゲンジロウ爺さんの姿を見つけるなり、怒り心頭の様子で近づいてきた。
「お兄様……?」
俺の隣で、ロザリアが近くにいる者だけが聞き取れるくらいの声で呟いた。
「あいつ、兄貴なのか?」
「はい。母親は違いますし、他にも弟や妹はおりますが」
産まれた順番では、兄である金髪の男が第一王子であり、妹であるロザリアが第一王女なのだという。
俺の見立てではロザリアも金髪の男も二十歳くらいだと思っていたのだが、もしかすると、ロザリアは俺やライカと同年代なのかもしれない。
(マジか……。そしたら、あの金髪が皇太子じゃねーか)
『今の王様に何かあったら、この国、ヤバそうですね』
せっかく、俺が我が儘を言って大森林を独立した領地として認めさせ、フランツという操り人形を政務官にすることに成功したのに、金髪の男が国王になったら、俺への意趣返しですべてを無かったことにしてしまうかもしれない。
(あいつが王様になったら、ロザリアを立ててクーデターでも起こすか)
『この人、魔王軍だけじゃなく、人間社会にも混乱をもたらそうとするんだよなぁ』
俺と山田が不穏な会話をしながら様子を窺っていると、金髪の男はゲンジロウ爺さんに詰め寄り、真っ向から睨み付けた。
「なぜ、ゲンジロウがロザリアに同行するのだ!」
「まあ、一応、ワシも勇者ですからな。覇王丸が行くのであれば、ちょうど良い機会なので、二人ともまとめて神聖教会に紹介しようということなのでしょう」
ゲンジロウ爺さんが建前の方の理由を口にすると、金髪の男は俺の方を睨み付けた。
「また、貴様か! 事あるごとに俺の邪魔をしてくれる!」
「知らねーよ」
もう、相手をするのも面倒くさいので、ロザリアの肩に手を置き、後ろに隠れるようにして俺の前に立たせる。
『全然、隠れていませんけど』
(知ってる)
直立した状態では、ロザリアの身長は俺の胸元までしかなく、ライカよりもほんの少し背が高いくらいだ。
(それなのに巨乳なんだよなぁ)
『上から覗き込むな! 相手、王族だぞ!』
山田から教育的指導が入ったので、俺は視線を金髪の男に戻した。
『怖いもの知らずにもほどがあるでしょう!』
(不可抗力だ)
『嘘つけ! あー、もう。絶対にさっきので貢献ポイント減らされるわー。犯罪者を捕まえて増やしたポイントを、覗きで減らすとかあり得ないわー』
山田が呆れたようにぶつぶつと文句を言っているが、いつものように無視をする。
こいつが紳士のように振る舞っているのは、単純にロザリアが守備範囲外だからだ。
眼下では、金髪の男に詰め寄られたロザリアが、困ったように愛想笑いを浮かべていた。
「お、お兄様。ゲンジロウ様を護衛にお借りしますね?」
「ロザリア、お前の護衛はそこの女ではないのか?」
「ジョアンはその……私の従者になるために修道女を辞めているので、聖地に足を踏み入れることができないのです」
ジョアンは厳密には違うと言っていたが、ロザリアはジョアンがまるで神聖教会から出入り禁止にされたかのような口ぶりで、理由を言い繕った。
(こいつ、爺さんにも妹にも適当にはぐらかされているな)
『考えようによっては不憫ですね。皇太子なのに』
俺が憐れみの視線を向けていると、それを感じ取ったのか、金髪の男は再びギロリと俺を睨みつけた。
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