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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
140/1639

獣人は目が良い

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

 ふと隣のライカを見ると、窓の外の耕作地をじっと見つめている。


「どうした? 何か気になるものでもあるのか?」


「あの馬車なんですけど……」


 そう言ってライカは指で指し示すが、ぱっと見ただけでも、耕作地のあちこちに荷馬車が停まっているので、どの馬車のことか分からない。


「どれだ?」


「あの、幌付きの馬車と、普通の荷馬車が並んで停まっているところなんですけど。さっき、変わった服装の人が、じっとこっちを見ていたんです」


 ライカの言葉に、ゲンジロウ爺さんと金髪の男が顔を見合わせた。


 勿論、俺にもライカの言葉が意味するところは理解できた。


「たしか、馬車に逃げられたんだよな?」


「そうだ」


 俺からの質問に頷きつつ、ゲンジロウ爺さんと金髪の男も窓に顔を寄せる。


「おい、小娘。変わった服装というのは? 具体的に説明しろ」


「あの……。農作業をするような服装ではなかったので、変だなって……」


「あの馬車か……。遠すぎるっ。本当に見えているのだろうな?」


「はい。灰色のローブみたいな服を着ていました」


 金髪の男の苛立たしげな問いかけにも、ライカは臆することなく頷いた。


 獣人の感覚器官――――目や耳の良さは、俺もオターネストで目の当たりにしている。


 これくらいの距離なら、ライカやハウンドには問題なく見えるだろう。


「仮にあれが取り逃がした馬車だとして、なぜ、停まっている?」


「それは、多分、木を隠すなら森というやつでしょう。猛スピードで遠ざかっていけば、否応なく目に留まりますからな。この馬車がいきなり現れたので、向こうも警戒しているのではないかと」


「つまり、目立ちたくない、見つかりたくない理由があるということだな?」


「恐らく……としか言えませんが」


 金髪の男の問いかけに、ゲンジロウ爺さんは言葉を濁した。


 だが、日本刀の鍔に手を添えているあたり、既にやる気になっているように見える。


「行きますかな?」


「そうだな……。白か黒かは、積荷を調べればはっきりする。ゲンジロウ、頼めるか?」


「お安い御用ですな」


 ゲンジロウ爺さんは頷くと、軽い身のこなしで客車の外に降り立った。


「爺さん、俺も手伝おうか?」


「そうだの。では、頼もうか」


「ハウンドも行けるか?」


「行ける。退屈していたから、願ったり叶ったりだ」


 ハウンドはゲンジロウ爺さんから貰った剣を軽く掲げて、獰猛な笑みを浮かべた。


(……あれ? アホ兄弟は?)


 客車を降りて周囲を見渡すが、そこにアホ兄弟の姿は見当たらない。


『今更ですか? あの二人は置き去りにしてきましたよ』


(え?)


『いや、後ろから付いてこられるようなスピードじゃなかったでしょ』


 言われてみれば、たしかにそのとおりだ。


 アホ兄弟にライカと金髪の男の護衛を任せるつもりでいたのだが、今の今まで二人がいないことに気が付かなかった。


(まあいいか)


『扱いの軽さが悲しいですね』


 俺はあっさり気持ちを切り替えて、御者席の兵士に二人の護衛を依頼した。


「覇王丸さんっ!」


 その時、客車の中からライカが声を上げた。


「どうした?」


「あれを!」


 ライカが指さす方向を見れば、幌付きの馬車が移動を始めている。


 御者席には――――誰かが座っているようだが、服装までは確認できない。


「灰色のローブを着ている。間違いないぜ」


 俺と同じ方向を見ていたハウンドが、力強く断言した。


「ワシらが外に出たことで、隠れるのは諦めたか。逃げる方向に舵を切ったようだの」


「ゲンジロウ、追えっ! 逃がすな!」


 金髪の男の号令一下、俺たち三人は一斉に走り出した。

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