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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
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少しだけ評価が上がる

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

 馬車はスピードを上げて郊外をひた走っていた。


 王都とはいえ、貧民街の近くともなるとさすがに道も舗装されていない。


「町外れは畑になっているんだな。この辺はオターネストも王都も同じか」


 時折、縦に揺れる客車の中で、俺は呑気に呟いた。


 ちょうど収穫の時期なのか、畑のあちこちに荷馬車が停まっている。


「なぜ、貴様らまで一緒に……!」


 対面に座る金髪の男が、恨みがましい視線で俺を睨み付けた。


「これから大捕り物をやるんだろ?」


「だから、何だ? まさか、手伝うとでも言うつもりか?」


「いや、近くで見たい」


「物見遊山かっ! いい加減にしろ!」


 金髪の男は怒鳴ったが、いつものように頭の血管が切れるほどヒートアップはしない。


『有事の際に冷静になれるのなら、案外、大物なのかもしれませんね』


 山田の金髪の男に対する評価が、少しだけ上がったようだ。


「ふんっ。しかし、残念だったな。この馬車は現場には行かんぞ」


「どういうことだ?」


「現場から離れた場所に停めて、そこから指示を出す。俺が前面に出れば、それが噂になる。そうなってしまっては、今後の活動に支障をきたすからな」


 つまり、手柄は要らないということだろうか?


「お前……もしかして、わざと自分の評価が低くなるように振る舞っているのか?」


「なんだ、それは? 俺の評価が低いとでも言うつもりか!?」


「いや、低いだろ。お前の良い噂なんか全然聞かないぞ」


 実際、王城の使用人たちの中には、金髪の男の陰口を叩いている者もいる。


 ちなみに、俺の中でも、金髪の男の評価は低い。


 ぶっちゃけ「ろくでなしのクソ馬鹿王子」だ。


 金髪の男は、俺の言葉に激怒するかと思ったが、予想に反して何も言い返さず、拗ねたように鼻を鳴らすだけだった。


     *


 程なくして馬車は建物の陰に停車した。


 どうやら、貧民街と郊外の耕作地をつなぐ一本道のようだ。


 そこには、伝令役の兵士が待ち構えていた。


「ご報告、申し上げます」


「話せ」


「殿下の指示に従い、酒場の包囲は完了しました。――――ですが、我々が現場に到着した時には、既に馬車の姿はどこにも見当たりませんでした」


「勘付かれたか。……まあ、やむをえまい。麻薬の押収を優先する。ただちに突入し、倉庫を検めろ。現物が見つかれば、関係者の身柄を拘束。何も無ければ、いつものように俺の名前を出して構わん。適当な言いがかりをつけて誤魔化しておけ」


 金髪の男は即断即決で指示を出し、伝令役の兵士も短く敬礼すると、即座に走り去った。


「確証無しで動いてんのか」


「倉庫に麻薬があれば、それが証拠になる。そもそも、空振りをしてもいいように正規兵ではなく、俺の私兵が動いているのだ」


 それはつまり、もし、突入が空振りに終わっても、下がるのは金髪の男の評判だけで、逆に突入が成功した場合には、国の評判が上がるということだ。


 似たような軍服の正規兵と私兵の区別など、一般人につくとは思えない。


「そんなことをしたら、お前の評判が悪くなるだけじゃないのか?」


「構わん。それに、完全に俺の独断で動いているわけではなく、陛下をはじめ国の要人は承知のことだ。諸侯の貴族どもは知らんだろうが」


「ふーん」


 一応、金髪の男も国のことを考えて、国のために行動しているようだ。


(ただの馬鹿王子くらいに評価を改めるか)


『それでもマイナス評価なんですね』


(こいつ、最初にライカを馬鹿にしたからな)


 その件については、金髪の男がライカに直接謝罪するまで許すつもりはない。


 だが、今後は少しだけ挑発するのを自粛してもいいだろう。


(これからは、ハウンドや、山賊のおっさんや、フランツと同じくらいにしよう)


『……それは自粛していないのでは?』


 俺は事の顛末を見届けるため、どっかりとソファに座り直した。

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