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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
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新しい装備を手に入れた

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

 最初に連れてこられたのは、大通りにある鍛冶工房だった。


 ゲーム風に言うなら武器と防具の店だが、それ以外にも生活用品やら調度品やら高級そうな物が陳列されている。


「ここは王家御用達の工房でな。王城にある物の多くが、ここで作られておる」


「御用達……。ベルギーのチョコみたいなやつか」


「まあ、そうだの」


 ゲンジロウ爺さんは次から次へと挨拶に来る店員たちに労いの言葉をかけながら、すたすたと店の奥に進んでいく。その姿はまるで……というか、正にVIPなのだろう。


 辿り着いたのは、武器や防具が展示されている区画だった。


「デパートみたいな場所かと思ったのに、結局、目的地は武器屋かよ」


「まあ、そう言うな。一応、王国が認めた勇者として神聖教会に向かうのだから、装備くらいは揃えておいた方がよい。交渉をするのであれば、見た目の印象は大事だぞ?」


「そんなことを言われてもなあ……」


 具体的に何を装備すればよいのか分からないし、そもそも俺の場合は、装備可能なサイズの防具が無い可能性もある。


 だが、ゲンジロウ爺さんはそんな俺の杞憂を一笑に付した。


「そこは心配するな。ワシが全員分の装備を見立てておいた」


 そして、俺たちは四日前に国王に拝謁した時と同じように、店員が奥の倉庫から運んできた新装備に着替えることになった。


     *


 俺に渡された装備は、すべて特注サイズだった。


 厚手の生地で作られた服、腰までの長さの外套、革製のブーツに、回復薬などを携帯できる小型の雑嚢カバンまである。


 防具は、手の甲から肘までを守ってくれる籠手と、胴体を守るベストタイプの鎖帷子。


 武器は、先端に装飾っぽい重りの付いた金属製の棍棒だった。メイスというらしい。


「おぬしは打撃にはめっぽう強いからの。鎖帷子は斬撃対策で、籠手は腕で攻撃を受け止める癖がなかなか直らんから、そのためだの」


「武器は? 剣じゃないのかよ」


「剣でもいいが、ワシが敵の立場なら、おぬしにはそれを振り回されるのが一番怖い」


「そうか?」


 試しに手にしたメイスを振ってみると、軽く振っただけなのに迫力のある風切り音がした。


「……それ、そんなに軽々しく振り回せる物じゃないよな? 結構、重いはずだぞ」


「まあ、当たれば痛そうだよな」


「――――もし、俺が敵なら、どんなに分厚い鎧を着ていても、死に物狂いで避けるわ」


 メイスを木の枝のように振り回す俺を見て、ハウンドが顔を引きつらせながら呟いた。


     *


 ハウンドに渡された装備は、俺と同じデザインの外套と、革製の胸当てとブーツ、狭い場所でも振り回せる短めの剣だった。


 国王に拝謁する時に着ていた軍服もインパクトがあったが、今のハウンドは軍人ではなく、歴戦の傭兵のように見える。


「俺は神聖教会には行かないけれど、貰っちまっていいのか?」


「構わんよ。受け取ってくれ」


「そんじゃ、遠慮なく。いいねえ。やっぱり、高級品は」


 ハウンドは新品の剣を手に取りながら、ニヤニヤと上機嫌に笑った。


     *


 ライカに渡された装備は、やはり同じデザインの外套と、動きやすさを重視したシンプルなエプロンドレス、革製のブーツ、そして短剣だった。


 外套が少しだけ特殊で、シスターベールのようなフードが取いており、それを被ることで獣の耳を隠せるようになっている。


「ジョアンに確認したところ、神聖教会でも修道女はそういった物を日常的に身につけているらしい。だとすれば、似たような物を身につけていれば、屋内であっても取れとは言われないだろうと思っての」


「なるほど。一理あるな」


 まして、俺たちはアルバレンティア王国が公認した勇者様ご一行として訪問するのだから、友好国からの客人に対して、軽はずみに「信仰の証」を取れとは言わないだろう。


「爺さんが考えたのか?」


「いや。ジョアンに知恵を借りた。礼ならジョアンに言うとよいぞ」


「はい。――――でも、これを準備してくれたのはゲンジロウお爺さんですから。ありがとうございました」


「いや。どういたしまして」


 ゲンジロウ爺さんは満面の笑みを浮かべて、ライカの頭を撫でた。


「あと、その短剣はあくまでも護身用だからの。身の危険を感じた時は、応戦しようなどとは思わず、逃げることを第一に考えるように」


「はいっ。分かりました」


「……殿下や覇王丸も、ライカ嬢ちゃんくらい素直だったら助かるのだが」


 ライカの頭を撫でながら、ゲンジロウ爺さんは俺を一瞥してため息をついた。


     *


 最後に、物のついでなのかどうかは分からないが、ゲンジロウ爺さんはアホ兄弟の二人にもお揃いの外套と剣を手渡した。


「俺たちにも!?」


「俺たちもとうとう正式な仲間の一員に!?」


「違う」


 俺は即座に否定したが、アホ兄弟の二人はまるで聞いていない。


「まあ、お前さんたちも毎日の稽古をサボらずに頑張っておるからの。その褒美だと思ってくれればいい」


「当然です! 俺たちは日々の努力を怠らない!」


「毎日コツコツが俺たちの信条ですから!」


「……それなら働けよ」


 一日おきに休みたいなどと、社会復帰のリハビリみたいなことを言わないでほしい。


「お揃いの外套がカッコいいっすね!」


「背中に覇王丸隊って刺繍を入れましょう!」


「やめてくれ」


 そんなことをしたら、せっかくの外套が特攻服になってしまう。


「お前ら、何か問題を起こしたら外套を没収するからな」


「俺たちに限ってそんな心配は無用です!」


「社会の役に立つことが俺たちの目標ですから!」


「口だけは立派だな」


 およそ無職のアラサー(職歴無し)の言うセリフではなかったが、それを指摘したところで馬の耳に念仏なので、俺は放っておくことにした。

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