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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
135/1635

ジョアンの過去

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

「そもそも、なんでそんなに神聖教会のことに詳しいんだよ?」


「あれ? 言ってなかったっけ? 私は神聖教会の修道女だったことがあるんだよ」


「は?」


 仰天の新事実を、さらっとカミングアウトしやがった。


「そうなのか?」


「あまり期待されていない貴族の娘が、神聖教会に預けられるというのはよくある話なんだ。なにしろ、治癒魔法を習得すれば、一生、食いぶちには困らないからね」


 ということは、つまり、ジョアンも貴族の出自らしい。


 まあ、そうでなければ、いくら優秀な魔法使いでも王女の教育係にはなれないだろうから、当然といえば当然だが。


「ただ、残念ながら、私は水の魔法を習得してしまった。治癒魔法というのはかなり繊細でね。ちょっとしたことで使えなくなったり、習得できなくなったりするんだよ」


「そういえば、そんなことを言っていたな。枢機卿がどうとか」


「そうそう。魔王軍の獣人部隊に襲われて、そのショックで使えなくなったんだ」


 襲われた時のショックで……ということは、トラウマが原因になっていることは間違いないだろう。


 スポーツ選手のイップスみたいなものだろうか?


「他の種類の魔法を覚えることも、治癒魔法を習得できなくなる原因の一つなんだ。そんなわけで、当時の私はすっかりやる気をなくしてしまってね。元々、信心深いわけではなかったから、修道女なんてさっさと辞めたい、帰国したいと考えるようになったんだ」


 そんな折、たまたま公務で神聖教会の自治領を訪れていたロザリアと出会ったのだという。


「神聖教会では、修道女になる時に誓いを立てるんだ。誓願と言うのだけど、簡単に言うと、修練期間を終えるまでは外部と連絡を取らないという誓約さ」


 恐らくは間者対策だろうね、と。ジョアンは付け加えた。


 外部との連絡が取れなければ、スパイとしては殆ど機能しない。


 内情を探るため、花嫁修業程度の薄っぺらな覚悟で娘を送り込んでくるなよという、神聖教会側の意思表示なのかもしれない。


「これを破ると破門になるだけではなく、その者の名前や出自を公表されてしまうんだ。家の看板に泥を塗るようなものだから、当然、貴族の娘としてはそんなことはできない。下手をすれは、一族の恥知らずと罵られて、放逐されてしまうかもしれないからね」


 神聖教会から破門されて、その上、家族からも絶縁されてしまったら、世間知らずな貴族の娘では、十中八九、路頭に迷ってしまうだろう。


「そこで、私はロザリアに泣きついた。そうしたら、彼女は私を従者として召し抱えたいと神聖教会側に申し出てくれたんだよ。その後、すったもんだはあったけれど、私は誓願の免除を貰って、帰国することができたというわけさ」


「それで、今は教育係か。大出世だな」


「まあね。ロザリアには足を向けて眠れないよ」


 さすがに自分のことを話しすぎてしまったと感じたのか、ジョアンは気恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべた後、改めてライカを見た。


「そういうわけだから、もし、ライカちゃんが一縷の望みにかけてでも治癒魔法を覚えたいと思うのであれば、さっきも言ったように、目を閉じて黙祷をするといいよ。結果、思うような成果が挙げられなかったとしても、魔法を覚えるための下地にはなっているから、訓練が無駄になることはない。元修道女である私からできる助言はこれくらいかな?」


「はいっ。早速、今日から始めてみます!」


 駄目もとで言ってみたつもりが、思いがけず習得の可能性を示されたことで――――それが蜘蛛の糸程度のものであったとしても、ライカの表情は明るくなっていた。


「あ。私みたいに、別の種類の魔法を覚えてしまう可能性はゼロではないから、その時はごめんね?」


「平気です! もし、水の魔法を覚えた時は、ご指導をお願いします!」


「勿論だとも」


 ジョアンはにっこり笑って、ライカに手を差し出した。


 ライカも手を差し出したが、二人が固い握手を交わすことはなく――――ジョアンの手はライカの頭上の耳をがっちりキャッチした。


「ひゃっ!?」


「ふふふ……。後で触らせてくれるって言ったよね? ここからは私の番だよ」


 そう言うジョアンの鼻息は、心なしか荒くなっている。


 ライカが助けを求めるようにこっちを見てきたが、俺は無言で首を横に振った。


 後で触らせてやると言ったのは他ならぬ俺なので、どうすることもできないのだ。


(我慢しろ)


 そんなぁー、と。


 頭の中で、ライカの心の声が聞こえたような気がした。


『これは……女性同士というのもありですね』


 頭の中で、変態の声がはっきりと聞こえたが、俺は無視をした。

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