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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
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土の魔法と治癒の魔法

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

「――――やっぱり、四つの中でなら土の魔法かなあ」


 いろいろと考えた結果、俺はそのように結論づけた。


「どうして、そう思うんだい?」


「他の三つの魔法よりも、なんとなく、イメージしやすい気がする」


 理由は言うまでもなく、俺が農家の息子だからだ。


「いいんじゃないかな」


 その理由を聞いて、ジョアンは納得したように頷いた。


「土の魔法なら、打たれ強さが身上の君とは相性が良さそうだ。それにしても、生まれ育った環境を参考にするなんて、随分と合理的じゃないか」


 そんな俺に、ジョアンが提示した訓練方法は「泥だんごを作って、それに魔力を込めながら硬くなれと念じる」という、なかなかシュールな内容だった。


「この時、自分の体の中にある魔力を注ぎ込むイメージを、ちゃんと意識すること。試行錯誤することが大事だよ。最後はその泥だんごを手で叩き潰すんだ」


 もし、泥だんごが簡単に潰れてしまうようであれば、その日の訓練は失敗。


 だが、ほんの少しでも魔法が作用していれば、叩いた時に違和感を覚えるらしい。


「いつもとは手ごたえが違うと感じたら、その日の感覚を忘れないように次の日も繰り返すこと。叩いた手が痛くなるくらい、泥だんごが硬くなったら合格かな? ただ、必ずしもすぐに成果が出るわけではないから、気長にやるようにね」


「分かった」


 元より、魔法に関しては「使えたら便利だし、カッコいい」くらいに考えていたので、何が何でも覚えたいわけではない。


(明日からは一日一回、泥だんごに祈りを捧げるとするか)


『宗教の儀式っぽくて怖いんですけど』


(魔法なんて、そんなものだろ)


 俺は茶々を入れてくる山田を適当にあしらって、隣のライカを見た。


「ライカは何にするか決まったか?」


「えーと……。はい、一応……。でも……」


 ライカにしては、煮え切らない返答だ。


 その理由は、次の言葉を聞いてすぐに理解できた。


「あの……。できれば、その、治癒魔法を覚えたいなって……」


「ああ、なるほどねえ。そうきたか」


 ジョアンは額に手を当てて、考え込むようなポーズを取った。


「戦闘要員じゃない私が、何の魔法を覚えたら皆の役に立てるのかって考えたんですけど……。やっぱり、治癒魔法かなって」


「まあ、そりゃあねぇ。自前で回復薬を作れるようになるわけだからね」


 たしかに、コンビニで買える栄養補給ドリンクくらいの感覚で毎日回復薬を飲めるとしたら、どんなに無茶な行程の旅でも余裕でこなせるだろう。


「でも、治癒魔法の覚え方って、神聖教会が秘密にしているんだろ?」


「情報は秘匿しているね。いろんな国が毎年のように密偵を修道士、修道女として送り込んでいるけれど、いまだに習得方法が外部に漏れたという話は聞いたことがない」


 昨日、国王もそんなことを言っていたような気がする。


「そんなわけで、現状、治癒魔法を覚えるには神聖教会の修道女になるしか方法が無いわけだけど、短期間で習得できるものではないし、そもそもライカちゃんは獣人だから、どうやっても無理だね」


「はい……」


 最初から無理だと分かっていたのか、ライカはあっさりと引き下がった。


 それを見て、ショアンは更に言葉を続けた。


「ただ、どうしても諦めきれないなら、毎日、目を閉じて黙祷するといいよ」


「え?」


「それが、治癒魔法の習得につながるかどうかは分からないけれど、少なくとも、意味の無い行為ではないはずだ。神聖教会の修道女は、空いた時間の殆どを祈りに費やしているからね。しかも、黒い布の目隠しを付けて、視界を完全に塞いだ状態で」


 目隠しをした状態で祈るとは、これまたシュールな絵面だ。


「なんで目隠しなんかするんだよ?」


「他ならぬ神聖教会が、それを推奨しているからさ」


 ジョアンが言うには、目が見えない状態が長時間続くと、たまに「見えないけど分かる」という不思議な状態になることがあるらしい。


「私はそれが、魔力をはっきりと知覚している状態ではないかと思っている。祈りに没頭することで集中力が増して、一時的にそういう状態になるのだろうね。――――不思議だろう? 魔法を習得するための訓練と同じことを、神聖教会が推奨するなんてさ。しかも、用意周到に目隠しまで用意して」


 まるで、そこに何か秘密が隠されているようじゃないか。


 例えば――――治癒魔法を習得するための秘密とか。


 そう言って両手を広げるジョアンは、どこか芝居がかっているように見えた。


「情報は外部に漏れていないんじゃなかったのかよ」


「漏れていないよ? 実際に、この方法で外部の人間が治癒魔法を習得したという話は一度も聞いたことがない。――――でも、だからといって、無関係だとは言い切れないだろう?」


 どうやら、ジョアンは本気で治癒魔法を習得するための秘密が祈るという行為の中にあると考えているようだ。

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