どうして、俺は牢に入れられているんだ?
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目覚めると、俺は木箱を横に並べただけの簡易な即席ベッドに寝かされていた。
それはいいのだが――――
「何だ? これはどういうことだ?」
俺が寝かされていた場所は、木材の柱を格子状に組み合わせた牢の中だった。
地下室なのか洞穴なのか、あるいは倉庫なのか。
狭くて薄暗い空間に、俺は閉じ込められているようだ。
「うおっ! 起きたのか!」
唯一の光源であるランタンの側で木箱に腰掛けていた男が、驚いたような声を上げた。
よく見れば、森の中で俺に話しかけてきた山賊のおっさんだ。
「というか、あんた、喋れたのか?」
「喋れた。あの時は錯乱していて、うまく喋れなかった」
「そ、そうか……。そうだよな。全身が傷だらけの大怪我だもんな」
山賊のおっさんは納得した様子で頷いた。
『息を吐くように嘘をつきましたね』
(本当のことを言っても、頭がおかしいと思われるだけだろ)
そんなことよりも、今は現状を把握する方が重要だ。
「おい、おっさん。どうして、俺は牢に入れられているんだ?」
「はあ?」
俺の質問に、山賊のおっさんは怪訝そうな顔をした。
「いや、だって……。あんた、素性が分からないし。体もデカすぎるからさ。もし、暴れられたら大変なことになるし……。仕方ないだろう。これくらい当然だぞ」
「そういうものか」
「そうだよっ。これでも、かなり良い待遇なんだぞ。今、仲間が薬と着替えを取りに行っているから、それまでおとなしくしていてくれよ。絶対に暴れるなよ?」
山賊のおっさんは、余程、俺のことが怖いらしい。
(大の大人が情けない)
『そんなことを言っても、覇王丸さんの体格、力士やプロレスラーと遜色ないですからねえ。見慣れていない人は怖いと思いますよ』
(知るか)
俺は山田の意見を無視して、牢の中を見回した。
(突貫工事で作ったような牢だな)
床、壁、天井は石造りになっているが、日本にある城の石垣のように見事な代物ではない。
囚人が穴を掘って逃げないように、手当たりしだいに石を埋め込んだという感じだ。
下手に石を取り外そうものなら、ドミノ倒しのように、崩落が起こる可能性がある。
(やっぱり、逃げるならこっちだな)
俺は木製の格子を掴んで、両手で押してみた。
両脇の岩肌に固定されているらしく、びくともしない――――が。
(これ、全力で体当たりしたら、多分、壊れるな)
今までの人生の経験則から、俺は格子の強度を「破壊可能」だと判断した。
『平和な日本で、どんな人生を送ってきたんですかねぇ?』
(壊れないだろうと思って押してみると、案外、壊れてしまうものが多いんだよ)
例えば、ブロック塀とか。
例えば、金網のフェンスとか。
インチキの超能力でスプーンを曲げるくらいあっさりと、壊れてしまうことがある。
『それ、覇王丸さんだけだと思いますよ』
俺が山田と軽口を叩いていると、扉を開閉する音がして、大きな荷物を抱えた小さい人影が近づいてきた。
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次回、やっとヒロイン候補の登場です。




