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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
125/1635

フランツとウォートランド侯爵 後編

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

「対外向けの窓口については、人間と最低限の交流をしていた森人の集落があるはずだから、そこを使わせてもらおうと考えている」


「いいんじゃないか」


「問題は、現地の住民が私や、私の考えを受け入れてくれるかどうかなのだが……」


「大森林の獣人や森人は、元々、人間のことをそこまで嫌っていないぞ」


 山賊のような見た目のおっさんや、身長二メートルの大男をあっさりと受け入れてくれるのだから、そのあたりの懐の深さに関しては、心配は要らないはずだ。


「俺の名前を出せば大丈夫だと思うけど、心配ならハウンドを同行させようか?」


「え?」


 突然の俺の提案に、ライカが驚いたような声を上げた。


「あの……。いいんでしょうか?」


「何が?」


「大森林まで戻ったら、結構な日数がかかると思うんですけど。ゲンジロウお爺さんが数日で許可が下りるって言っていたので」


「ああ。神聖教会の話か」


 そういえば、神聖教会を訪れるための許可待ちで、王都に滞在することになったのだった。


 豪華な部屋に案内されたあたりから、すっかり観光気分になっていた。


「ハウンドが戻ってくるまで待ちますか?」


「いや。あいつは置いて行こう。今、決めた」


「えぇ!?」


 俺の突然の決断に、ライカが驚いたような声を上げた。


「話を聞く限りでは、神聖教会が獣人差別の元凶だろう? ハウンドがいると、面倒なことになるかもしれない。だから、置いていく」


「私は……?」


「ライカは耳と尻尾を隠せば誤魔化せると思う。あ、どうしても不安なら――――」


「行きます」


 留守番でもいい、と。


 俺が最後まで言い終える前に、ライカは断言した。


「もしかしたら、迷惑をかけるかもしれませんけど……」


「気にするな。もし、獣人だとバレて危害を加えられそうになったら、この国との外交問題になると脅して、そのすきに逃げるから」


 しれっと爆弾発言を投下する俺の向かい側では、フランツとウォートランド侯爵の二人が、何とも言えない顔をして話を聞いていた。


「冗談だとは思うが……。その発言は、聞かなかったことにしてもいいかね?」


「お、いいぞ。むしろ、聞かなかったことにしてくれ」


「フランツから話を聞いた時は、大げさに言っているのだろうと思っていたが……。まあ、時代を変えるほどの勇者というのは、本来、君のように破天荒な存在なのだろうね」


 そう言って、ウォートランド侯爵は懐から取り出した麻袋をテーブル上に置いた。


「これは少ないが、私からの感謝と激励の気持ちだ。王都にいる間の小遣いとでも思ってくれればいい。好きなことに使いなさい」


「お、ありがとう。悪いな。――――おお。結構、重い」


「ちょ、失礼ですよっ!」


 俺が麻袋の重さを確かめるように上げ下げしていると、横からライカに注意された。


 ウォートランド侯爵はその様子を無言で眺めていたが、ややあって席を立った。


「それでは、今日はこれで失礼するよ。魔王軍をこの大陸から追い払うまで、私は王城と自分の城を行ったり来たりの生活だが、また会う機会はあるだろう」


「そうだな」


「次は、私の城に招待しよう。是非、そこのお嬢さんと一緒に訪れてくれると嬉しい」


「近くを通ることがあったら、そうする」


 俺が適当に返事をすると、ウォートランド侯爵はフランツと共に部屋を出て行った。


(なんだろう……)


『何がですか?』


 フランツとウォートランド侯爵が出て行った後、胸の中にもやもやした感情が残った。


(何か大事なことを忘れているような気がする)


『ハウンドのことじゃないですか? また、本人不在の時に勝手に行動を決めちゃって』


(それだ)


 案の定、俺はハウンドから散々愚痴られることになるのだが、それは翌日のこと。


 その日は他に突発的なイベントが起こることはなく、俺とライカはようやく豪華な部屋で存分に寛ぐことができた。

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