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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
117/1640

国王に拝謁する

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

 豪華な装飾の施された両開きの扉の前で、フランツは立ち止まった。


 扉の前に立つ衛兵に、簡単な報告をして、俺たちの方に向き直る。


「さあ、ここだ。扉の向こうは玉座の間になっている」


「おっさんは来ないのか?」


「うむ。この中にいるのは、陛下を筆頭に大臣や大貴族ばかりだからね」


「ああ……なるほど」


 どうやら、無職の伯爵はお呼びではないらしい。


「まあ、なんだ……。そのうちきっと良いことがあるから、元気出せよ?」


「憐れむような目で見るのは、やめてくれないか!?」


 フランツは声を潜めながら声を荒げるという器用なことをして、俺を睨み付けた。


「私はこのままでは終わらないよ。いつかきっと要職に返り咲いて、君と一緒に酒を酌み交わすという約束を果たしてみせる」


「そんな約束したっけ?」


「したじゃないか! 別れ際にしたじゃないか!」


 フランツは悔しそうに地団太を踏むと「忘れないでくれたまえ!」と捨てゼリフを吐いて、この場を立ち去った。


「覇王丸よ。おぬし、フランツ殿に何か恨みでもあるんかの?」


「無いよ」


「じゃあ、なんで……いや、もういい」


 ゲンジロウ爺さんは眉間のシワを揉みほぐしながら「よく分からん」と呟き、衛兵に合図を送った。


     *


 二人の衛兵が左右に分かれて扉に手をかけ、ゆっくりと押し開く。


 玉座の間は、奥行きのある縦長の大広間だった。


 最奥に玉座と思われる無人の椅子があり、入口の扉から玉座まで赤絨毯が敷かれている。


 絨毯の両側には等間隔で武装した衛兵が立ち、俺たちを監視している。


 ちなみに、俺たちの武器は城への持ち込みを禁じられたため、馬車に置きっぱなしだ。


 唯一、ゲンジロウ爺さんだけが特例で、今もなお日本刀の携帯を許されている。


 玉座の左右には、フランツが着ていたものよりも更に高そうな服を着た、いかにも偉そうな風体のおっさんたちが、やはり俺たちを興味深げに観察していた。


「……俺、なんだかもう不愉快になってきた」


「我慢せい」


 隣に立つゲンジロウ爺さんと、小声でひそひそと言葉を交わす。


「そもそも王様がいないじゃん」


「後からお見えになる。黙っておれ」


 よく見ると、玉座のある場所は舞台のように高い位置にあり、俺たちは階段状になっている段差の手前で制止するように指示された。


(高い場所から、こっちを見下ろせる造りになっているわけか)


 とはいえ、身長二メートルの俺が直立していると、目線の高さはあまり変わらない。


 俺が玉座の左右に立ち並んでいる大貴族と思しき男たちを不躾に眺めていると、ゲンジロウ爺さんが隣で片膝をつき、頭を下げた。


 ハウンドとライカもそれに倣ったので、仕方なく、俺も同じようにする。


 しばらくすると、広間の奥から足音が近づいてきて、玉座に腰かける音が聞こえた。


「面を上げよ」


 想像していたよりも低い男の声。


 俺が顔を上げると、玉座には金髪で口髭を生やした中年の男が腰かけていた。


 四十代後半から五十代前半くらいの外見。


(王様って、総理大臣みたいなものだよな……?)


 一国の頂点に立つ立場としては、かなり若いのではないだろうか。


「なるほど。フランツの報告にあったとおりの大男だな」


 国王は俺のことをジロジロと観察した後、納得したように頷いた。


「ゲンジロウと大森林の勇者は、立ち上がることを許す」


「……」


 ライカとハウンドは? と。


 そう言いたいのをぐっと堪えて、無言で立ち上がる。


 立ち上がる時に、斜め後ろを一瞥すると、自称「差別されることに慣れっこ」のハウンドは、俺だけに分かるように微かに首を横に振った。


 多分、自重しろという合図だろう。


(分かってるけど、ムカつく)


『我慢しましょうね』


(山田!?)


 突然、職務放棄していた山田が復帰した。


(お前、今までどこに行っていたんだよ)


『今はそんなことはどうでもいいんですよ。目の前のことに集中してください』


(こいつ……!)


 間違いなく、このタイミングを狙って戻ってきたに違いない。


(今夜、覚えてろよ)


『呼びませーん』


(ムカつく……! お前の方が何倍もムカつく!)


 俺は内心の怒りを隠しきれずに、射殺すような目つきで国王を見た。


 国王は俺に睨まれて少しだけ眉を動かしたが、特に怒ることも、怯えることもなかった。


 さすがに睨まれたくらいではまったく動じない程度の胆力はあるらしい。


「余は、アルバレンティア王国国王。ラルフ・エードラム・アルバレンティアである」


「ふーん」


「大森林の勇者よ。名は?」


「鬼怒川覇王丸だ。あと大森林の勇者って呼ぶな」


 俺の乱暴な物言いに国王本人ではなく、周囲の大貴族たちがざわめいたが、国王は気にした様子もなく、ゲンジロウ爺さんに目線を向けた。


「ゲンジロウ。この者はお前が探していた勇者で間違いないか?」


「間違いありませぬ」


 ゲンジロウ爺さんはきっぱりと断言した。


「では、フランツの報告にあったとおり、この男が後ろの獣人と共にオターネストに潜入し、敵の指揮官を倒したと?」


「そうですな。既に報告が上がっているとは思いますが、先刻、覇王丸の実力を計るために、手合わせをいたしました」


「聞いている。――――お前、負けたらしいではないか」


 国王の発言に、再び周囲の大貴族たちがざわめく。


「それを踏まえた上で、覇王丸について、私の個人的な感想を申し上げましょう」


 ゲンジロウ爺さんがぐるりと周囲を見渡すと、大貴族たちは大人に叱責された子供のように口を噤んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぶっちゃけ、自国民でも無ければ他国の貴族でも使者でも何でも無く敬う相手でもないのに跪く必要性皆無だよね。
2021/09/04 19:29 退会済み
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