剣聖 VS 覇王丸(前編)
一日1000文字を目標に続きを書いています。
隔日で更新できるように頑張ります。
最後に俺が出てきたことで、観衆からどよめきが上がった。
『完全にラスボス扱いですね』
(まあ、仕方ない)
体がデカいと、往々にしてこういう扱いを受けるものだ。
特に、こっちの世界は地球と比べて大人の平均身長が低いらしく、アホ兄弟も、金髪の男も、兵士たちも、目測で身長が一六〇~一七〇センチくらいしかない。
そんな連中から見れば、たしかに俺はラスボスだろう。
(ラスボスらしく、勇者を罠にはめるか)
『小物っぽいラスボスですね』
(別に気にしない)
俺は、ゲンジロウ爺さんが腰に佩いている日本刀を指さした。
「爺さん、腰の刀は使わないのか?」
「これかの? ……どうしてそんなことを?」
「いや。使うのなら、最初から使ってほしいと思ってさ」
「……本物だぞ?」
ゲンジロウ爺さんの声色が、ほんの少しだけ変わった。
そのへんの兵士が携帯している量産品の剣と一緒にするなよ、と。
威嚇付きの警告をされたような気がする。
だが、ここで気おされて、口を噤むわけにもいかない。
「俺ってさ、見てのとおりの図体だから、他人よりも打たれ強いのが取り柄なんだよ」
「ふむ。まあ、見るからにそんな感じだの」
「だから、木剣で殴られるくらいなら、はっきり言って、避けないと思うんだよね。それなのに「本物の剣だったら死んでいた」とか言われるのは、納得がいかないからさ」
「なるほど。だから、使うのなら最初からこれを使えと」
ゲンジロウ爺さんは日本刀の鍔に指をかけ、思案顔になった。
「ゲンジロウ! 相手がお望みなのだ。腰の剣で斬り捨ててしまえ!」
「そういうわけにもいくまいよ」
余程、俺を酷い目に遭わせたいらしい金髪の男を、ゲンジロウ爺さんは冷静に窘めた。
「ま、よかろ。そこまで言うのなら、無理して避けなくてもいいぞ。こちらも、突かれたから死んだ、当たったから斬れたなどと言うつもりはない」
「日本刀は使わないのか?」
「命のやり取りをすることが目的ではないからの」
ゲンジロウ爺さんの返答を聞いて、俺は心の中でガッツポーズをした。
(これで、どれだけ殴られても大丈夫だな)
『普通は平気じゃないんですけどね』
一般論を言えば、木剣だから安心という話には絶対にならない。
本気で殴れば簡単に骨が折れるし、当たり所が悪ければ死んでしまう。
だが、俺はトラックと正面衝突しても骨折をしなかった男だ。
魔王軍の中ボスであるサルーキにも、拳で殴り勝っている。
『覇王丸さんが死んだら、骨で伝説の装備が作れそうですよね』
(人骨の鎧とか、完全に呪いの装備じゃねーか)
俺は山田を相手に軽口を叩きながら、既に木剣を構えているゲンジロウ爺さんと対峙した。
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