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進化の魔王と覚醒の覇王。 ~転生する前から世界最強~  作者: とらじ
アルバレンティア王国と神聖教会編
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剣聖 VS ハウンド(後編)

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

隔日で更新できるように頑張ります。

「くっそ……」


 ハウンドは大きく後ろに下がり、ゲンジロウ爺さんとの距離を取った。


 呼吸が荒い。


 どうやら、後先を考えずにアクセル全開で攻撃を続けた結果、ハウンドの方が先にガス欠を起こしてしまったようだ。


「そろそろやめるかの?」


「冗談を言うなよ……。涼しい顔して、こっちの攻撃を悉く避けやがって」


 そう言うと、ハウンドは木剣を短く握り直した。


「最後は捨て身でいかせてもらうぜ!」


 叫ぶと同時に、一直線に駆け出す。


 そして、ゲンジロウ爺さんの攻撃の間合いに入る寸前に、木剣を手槍のごとく投げつけた。


 ゲンジロウ爺さんは、自分の木剣を振り上げて、ハウンドの投げた木剣を迎撃する。


 そこに、拳を振りかぶるハウンドが肉薄した。


「もらった!」


「甘い」


 ハウンドの拳と、ゲンジロウ爺さんの手が交錯する。


 次の瞬間、ハウンドの腕は不自然な軌道を描き、振り下ろしたはずの腕が、なぜか明後日の方向に振り上げられた。


「ぐっ!」


 挙手をするような体勢でバランスを崩したハウンドの胸に、木剣の刺突が打ち込まれる。


 ハウンドは衝撃に耐えた後、悔しそうにため息をついた。


「……俺の負けだな」


「そこまで! 勝負あり!」


 金髪の男が試合終了を宣告する。


 周囲の観衆から、どっと拍手が沸いた。


 それは、勝利を収めた剣聖に対する称賛の拍手ではあるが、同時にハウンドの健闘を称えるものでもあるようだ。


 試合前のような心無い野次は、どこからも聞こえてこなかった。


「惜しかったの。おぬしほどの手練れなら、すぐにでもワシの部隊に入れるが?」


「俺を口説くつもりなら、まず、俺のボスを口説いてくれよ」


「ふむ……。では、そうしようか」


 ゲンジロウ爺さんの勧誘をやんわりと断って、ハウンドが戻ってくる。


「勝てなかったわ。あの爺さん、化け物だ」


「馬鹿だな。なんで降参したんだよ」


「胸を突かれたんだぞ? 本物の剣なら致命傷だよ」


 そう言って、ハウンドは自分の左胸を指差す。


(これなんだよなぁ……。俺が爺さんに勝てない理由)


 この「本物の剣なら死んでいた」理論が罷り通ってしまうと、肉を切らせて骨を断つ戦法が必勝パターンの俺としては、勝機を見出すことができない。


「三回までは死んでもいいことにするか」


「どういうことだよ?」


「心臓が三つあるとか」


「お前、魔王かよ。馬鹿なことを言ってんじゃねぇよ」


 ハウンドは引き返す時に拾ってきた木剣を俺に手渡すと、小声で耳打ちをした。


「風の魔法だった」


「ん?」


「爺さんが使った変な技だよ。腕がつむじ風みたいなものに包まれて、強引に上に持って行かれたんだ。風の魔法で間違いない」


 気をつけろよ、と。


 最後にそれだけを伝えて、ハウンドはその場に座り込んだ。


「覇王丸さん、頑張ってください」


 ライカが両手を握り拳にして、俺を激励する。


「兄貴なら楽勝ですよ!」


「いっそのこと、本物の剣でぶった切ってやりましょう!」


 アホ兄弟は、やはりアホだった。


(……本物の剣ねぇ)


 模擬戦で命を懸けるなんて馬鹿馬鹿しすぎる。


 そもそも、相手の命を奪うことが目的ではないのだ。


 ゲンジロウ爺さんだって、そのつもりで戦っているはずだ。


(……ああ、そういうことか)


『何か卑怯な手でも思いついたんですか?』


(卑怯と決めつけるな)


 まあ、相手の立場を利用した搦め手ではあるけれど。


 俺は頭に思いついた作戦を確かな勝ち筋に変えるために、ゲンジロウ爺さんの前に立った。

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