俺と戦いたければ、まずはこいつらを倒せ
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「要するに、爺さんと模擬戦をして勝てばいいんだろ?」
「まあ、勝てれば文句なしだの。ただ、こちらも手加減はせんが」
ゲンジロウ爺さんは手にした木剣の長さを確かめながら、何度か素振りをした。
両手で持った木剣を振り下ろす度に、シュッという風切り音が聞こえてくる。
たったそれだけの動作が、素人目にも恐ろしく洗練されているように見えた。
(……もし、勇者の特性を持っている奴が、子供の頃から爺さんになるまで剣道を続けていたら、どれくらい強くなるんだ?)
『そりゃ、剣聖って呼ばれるくらいには、強くなるんじゃないですか?』
(それ、絶対に勝てないじゃん)
なんとなく、あの爺さんなら、真っ向勝負でもサルーキに勝ってしまうような気がする。
『大丈夫です。技術は天井知らずだとしても、体力や筋力は老化で相殺されますから。純粋なフィジカルでは覇王丸さんに分がありますよ。……多分』
(逃げ回って疲れさせるか、サルーキと戦った時みたいに、強引に腕を掴んで殴り合いに持ち込むしかないのか)
だが、仮にそのような勝ち方をしたところで、金髪の男を納得させることはできないだろう。
いずれにしても、もう少し情報が欲しいところだ。
「お前ら、ちょっと来い」
俺は後ろを振り返り、馬車の近くで見物人と化していた二人組の男と、ついでにハウンドを呼び寄せた。
「まずは、こいつらが爺さんの相手をする」
「何だと?」
「爺さんがどういう戦い方をするのか、先に見てみたい。だから、俺と戦いたければ、まずはこいつらを倒してみせろ」
「ふざけるな! そんな理屈が通用するか!」
案の定、金髪の男は即座に却下したが、
「別に構わんよ」
ゲンジロウ爺さんはあっさりと承諾した。
「ゲンジロウ!?」
「こちらも強引なやり方をしているのですから、それくらいの条件は飲むべきでしょう。そもそも、勝つことが目的ではないのですから」
「だが、剣聖があっさり負けたなどという噂が広まれば、人類軍の士気に関わるぞ」
「ま、簡単に負けたりせんよ。殿下はそこで見ていてくだされ」
ゲンジロウ爺さんは金髪の男との会話を打ち切り、俺に向き直った。
「おぬしの言うとおりでいいぞ。最初の相手はそこの二人組かの?」
「そうだ」
俺は頷いて、既に兵士から渡された木剣を構えて、戦隊もののヒーローのようにカッコいいポーズを決めている二人組の男を見た。
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