98、最後の力3
振り下ろされた土人形の腕を、サソリは横っ飛びで回避した。相手の拳が地面にめり込む。
相手の身体を鋏で殴りつけて体勢を崩させ、その横を通り過ぎてハイランドの元へ向かう。そのつもりだった。
鋏の一撃によって土人形の身体がよろけたことになんとも言えない感動を覚えたが、それは一瞬だけで、土人形は一瞬で体勢を整えた。衝撃にただ少し身体がぶれただけだ。
見ればその足が地面に張り付いている。一体化していると言ってもいい。もとが土なのだからこのようなこともできるのだろう。
このまま無防備に攻撃されたくなければ土人形に向き直るしかない。時間がかかる覚悟をサソリがしかたなく決めた時、土人形の胴体が爆ぜた。
驚きながら、足を進める。
はしゃいだような声が聞こえた。
「どーうよ。役に立ってるでしょー。誰かさんと違って! 誰かさんと違って!」
「わかったからさっさと次を撃てよ!」
頼もしい援軍たちの声。
次々と土人形が倒されていく。
そしてハイランドが目前に見えた時。
「――っ」
例の、見えない魔法の壁にぶつかってサソリはたたらを踏んだ。
だが、それに続くようにしてユラユラの間延びした声。
「これで私の魔法は打ち止めですー」