96、最後の力
「やーくたたーずー!」
「うっせえ。こんなん邪眼に耐える人間のほうがおかしいだろ」
「役に立たなかったことに変わりはないじゃん」
「へいへい。俺は応援してるからせいぜいお前は役に立ってくれよ」
「うわ! 開き直った!」
新しく現れた魔物たちはなにやら言い合いをしていたが、どうやら仕掛けた攻撃が失敗したということらしい。
ただ、さらなる敵が現れたということ自体に、ハイランドは重い意味を感じたらしい。頭上から襲いかかってくるタコの足を魔法で吹き飛ばしてから、彼は嘆くように息を吐いた。
「そろそろ、潮時のようですね。おいとまさせていただきましょうか」
「逃がすと思ってるのか。って狼さんが言ってますねー」
ユラユラが律儀に通訳をしている。
その狼は黒い身体で果敢に土人形に体当たりしていた。それで土の人形が壊れようが再生してしまうのだが、そのぶんハイランドの魔力は消費されるはずだ。
と、思っていたのだが。
突然に地面から土の人形が次々と起きあがり、さらに数をましていった。これまでの数倍くらいだろうか。
続けて魔法が行使され、爆炎が虚空に生まれて荒ぶる勢いのままオクタコを吹き飛ばした。
そして、さらにハイランドは魔法を使おうとしている。そして時間がかかっている。今までにない規模の魔法であることが、傍目にも分かった。