95、参加者8
無敵の鎧に襲いかかられる脅威がなくなったのでハイランドのほうを見ていたのだが、冒険者たちにしてみれば鎧の中の仲間が急に危険にさらされたとしか思えなかったらしい。
そういえば言葉が通じていないのだから、なぜこの巨大なタコ、オクタコさんが出てきたのかも分かっていないに違いない。
捕まった鎧へと向かう冒険者の前に、サソリは立ちふさがった。
「あー、えー、うー」
だが言葉が通じないのだから仕方がない。サソリを見て戸惑う冒険者たちを前に、サソリは言葉にならない声を漏らした。
それから自分でどうにかするのを諦めて、仲間を呼んだ。
「ユラユラさん、言葉通じないから助けて」
「あ、どうもどうも。わかりましたー」
ユラユラもオクタコが土人形を潰すのを眺めていたようで、声をかけるとはっとしたように近づいてきた。土人形は潰されても吹き飛ばされても、地面から何度も復活している。
ユラユラが冒険者に向かって言った。
「心配ありませんよー。こちらのおっきなタコさんたちは、なにかあった時のために隠れていた知り合いですのでー」
そのなにかあった時というのが、ハイランドと戦う時を想定していたのは明白だったが。
冒険者のひとりが、明るく言うユラユラの顔を見てから、心配そうにタコの足に視線を移した。
「心配ないって、そのまま潰されたりしないのか?」
「もちろんですよー」
「そうか、よかった。いや待て、タコさん……たち?」
「はいー」
冒険者の疑問に答えるように、木と木の間に人影が見えた。
それは一匹の、トカゲのような生物を抱えている。
そのトカゲの両目がぴかっと光って、けれどもなにも起らなかった。