93、参加者6
もはやユラユラにできることはほとんどなかった。
最初から手加減されていることは分かっていたが、それに付け込んで相手を消耗させる腹積もりだった。体力や精神力、なにより魔法使いにとって命綱であるはずの魔力を、少しでも削っていく。
そして今、ユラユラの魔力はほとんど残っていなかった。自然回復する魔力のことを考えればあと一度くらいは魔法を使えるだろうが、それ以降はなにもできない。せいぜい本当に通訳をするぐらいだ。
人間の魔法使い、ハイランドの魔力の底は見えない。そのことに驚く。
もちろん、ユラユラよりもハイランドのほうが魔法使いとして優れているのは不思議ではない。ユラユラも自分は初心者魔法使いの気持ちでいる。
だが、ハイランドは周囲から何匹もの魔物に攻撃されて、それをいちいち魔法で防いでいるのだ。魔力の消費は多いはずだ。
けれど、まだ、ハイランドには余裕が見える。
このままでは、まずい。
衝撃波に吹き飛ばされ誰もが身動きできないうちに、ハイランドの前に土の槍が浮かび上がり、勢いを伴ってドラゴンの四肢に突き刺さった。
背後のほうで治癒の光があふれたのを感じる。おそらくはカバがサソリの怪我を治そうとしたのだろう。だがそれでどれだけ状況が持ち直すのかは不明だ。
そして事態が動いた。
狼がハイランドに飛びかかろうとしたとき、魔法使いの周囲を何体もの土の人形が取り囲んだ。魔法で生み出されたその人形は、それなりに頑強であるらしい。突き出された腕に押されて狼が吹き飛ばされる。
サソリの声が響いた。
「オクタコさん! もう無理!」