88、参加者
当初の予定通り、カバはゆっくりと歩いていた。
最初に出会った時から、カバはスウマに、つまりハイランドに違和感というか、疑いを持っていた。それはただ単に、スウマという少年があまりにも、いい人過ぎたからだ。
どんな生物とも、分かりあえる。
そういう精神は素晴らしいものだと思う。尊敬すべきものだと思う。
だが、カバはもう知っていた。この世界はそんなに素敵なものばかりではないのだ。初めて森で妖精に出会った時、襲いかかられたあの時の気持ちを彼女は忘れていない。
そしてこの世界に生きる人々は、自分よりもよっぽど、魔物を倒すべき存在として認識しているはずなのだ。
なのにスウマはあまりにも、自然にこちらの話を受け入れていた。
スウマのことを疑ってはいたし、けれども彼の言うことがうそであるのならば、それは悲しかった。
彼の言う素敵な言葉が、本当だったらいいのに。
サソリさんの聞いてきた情報が、間違っていたらいいのに。
けれども結局、スウマは、ハイランドは嘘をついていて、そしてカバはゆっくりと歩いていた。
悲しくて、そして怖くて。
歩き終えると、ひっそりとカバは癒しの光を黒い狼にあてた。狼が魔法使いに飛びかかっていく。
驚く魔法使いに対してユラユラが、愛や勇気の力がとか言っていた。
愛はともかく。
狼の元までこっそりと歩いてきたのは、いくら姿を見えにくくして気配を消す技能を手に入れたとはいえ、勇気の力が必要だったかもしれない。