84、戦い2
サソリは自分に向かって剣が振り下ろされるのを見ていた。とっさのことに見ていることしかできなかった。
その剣との間にカイトが割って入り、盾で無理やり軌道をそらしたのが見えた。
「おおおおおお!?」
「ぼーっとしてないでくださいよ。サソリさん」
「え、あ、ありがと」
助けてもらったことに礼を言う。距離を取るために後ろへ下がる。
全身鎧の人間に対して、他の冒険者が叫んでいた。人間が全員敵に回った、というわけではないらしい。いや、
「な、なにをやってるんだ!」
「違う! 俺じゃない! 鎧が勝手に……!?」
その言葉から、彼の意思でないことが分かった。鎧を用意したのはハイランドだろう。彼があらかじめなんらかの細工をしていたに違いない。
ハイランドの声がする。
「もともと僕に雇われたのでしょう。魔物を倒すのになんの不都合があるんですか」
「ふ、ふざけんな! こんな得体のしれない鎧を着せておいて……っ」
「やめろっ。相手はお貴族だぞ!」
なにやら人間同士でもめているようだったが、鎧の動きは止まらなかった。カイトが闇の魔法を浴びせる。
「ぐあっ!?」
うめき声は鎧の中の人間の物だった。
「すとーっぷっ。中の人は敵じゃないから! 一般人!」
「一般人かどうかは疑問ですけど、じゃあどうするんですか。攻撃するほかないですよ」
嘆息混じりにカイトが言った。