81、人間の魔法使い2
大きく成長した姿になったスウマが、優雅に一礼する。
「改めて自己紹介をしましょう。僕はハイランド・トリスペロー。ドルニカ王国の貴族にして、偉大なる魔法使い」
「自分で偉大とか言っちゃうんだ……」
というサソリの声はその人間に届かなかった。
近くに来ていたカイトが、言う。
「すごそうなのは確かですよね。電撃も、そして姿を変えていたのも魔法でしょう」
「いきなり成長してびっくりはしたけど……」
そんな気楽な会話をしながらも、けがの程度を心配しながら狼に視線を向ける。
楽しそうにスウマが笑った。
「正直な所、抜け出してきていましてね。見つかったら騎士に連れ戻されてしまうので姿を変えていたのですが……。ふふ、あなたもまさか、相手の姿が変わっているとは思わなかったでしょう」
「…………」
「それにしても運がいい。まさかこんなにも早く、あなたをおびき寄せることができるとは」
その言葉に、狼が声を絞り出した。
「……俺も運がいい」
「…………?」
「こんなにもはやく、お前が正体を現してくれたんだからな。ずっと変装されているよりはましだ」
狼の強がりだと思ったのだろう。スウマ……ハイランドは、唇を僅かに吊り上げ笑みを浮かべる。