8、自己紹介2
促すつもりでサソリが隣を見ると、少女は身を固くした。視線が一斉に集まったからかもしれないし、自己紹介をしなければならないからかもしれない。
にっこにこの女性、ユラユラがその名の示すような穏やかさで声をかける。
「緊張しなくても大丈夫ですよー。ゆーっくりでいいですからねぇ」
「さっさとドラゴン育ててぇんだけど」
青年の言葉のせいで台無しだった。その隣にいる勝ち気な女性が、不愉快そうに青年をにらみつけている。
少女は困った表情をして、それからどうにか声を紡いだ。
「あ、あの…………魔物は、カーバンクルです。富とか幸せを呼ぶ魔物なんです。特技は癒しビームです」
「え? 特技がなんですって?」
先ほどまで青年をにらみつけていた女性が、困惑の表情を浮かべる。
一度話し始めて勢いがついたのか、どうにか少女も返答をした。
「えっと、その。額の宝石から、他の人を回復する光を放つ特技を、成長点で覚えました。幸せにする、みたいなくくりで……」
「へぇ。じゃあ、もしも怪我した時はよろしくね!」
「は、はい」
にっこりとほほ笑まれて、少女がゆるやかにうなずいた。
それから、言いづらそうに、
「あ、あと……その、名前はまだ決まっていません。ごめんなさい」
「カーバンクル? だっけ? なんだからカバちゃんでいいんじゃないの。正直どんな魔物なのかよく分かってないけど」
「え、あ、はい……」
困ったように少女が同意した。
とりあえずサソリは言った。
「無理に受け入れることないと思うけど」
「い、いえ……」
大丈夫、というようにそう返事をしたので、これ以上は話を続けるようなものでもないのだろう。実際にこの少女、カバちゃんがどう思っているかは分からないが。
それから、促されたわけでもないけれど青年が大きく声をあげた。
「うっし、次は俺だな! 俺の魔物はドラゴン、最強の魔物だ! まあまだ最初だから強そうじゃないのが不満だが、すぐにかっこよくしてみせるぜ。名前はグラムラントだ!」
堂々とした態度に圧倒される。その様子はどこか、うらやましくさえ思えた。
が、青年の隣の女性はそうではなかったらしい。あっさりと青年の言葉を流して話し始める。
「じゃ、グラちゃんの次はあたしね」
「グラちゃん!?」