79、話し合い3
語る狼の言葉には、怒りがにじんでいる。
「俺はその日、雛子と……仲間と一緒に、他の魔物を倒すために森を歩いていた。いつもと変わらない、普通の日のはずだった。だが、人間の集団を森で見つけたんだ。鎧を着込んだ、あんたたちが言う騎士団だったんだろう。なにかを調査しているようだった」
その言葉はサソリたちにとって、なにも不思議のないものだった。
が、スウマにはそうではなかったらしい。ユラユラから言葉を伝えられて、怪訝な表情をしている。
「他の魔物を倒すために? ……それは、食事でということですか?」
「……まあ、いろいろな事情はある。これは関係のないところだ」
「そうですか……」
スウマはもっと聞きたそうにしていたが、自重したようだった。もっと大切な話がほかにある。
狼は話を続けた。
「わざわざ人間を襲うつもりはなかった。仲間も嫌がっていたしな。だから人間を避けようとして……見つかった。襲われたことは仕方ないことなんだろう。だが、その中の鎧を着込んだひとりが」
狼はうなる。
「魔法を使って俺たちを無力化し、他の奴に命令して取り押さえさせた。動けないところを徹底的にいたぶられたよ。そいつは笑ってた。自分の楽しみのためにそれをやったんだ」
そして今、狼の彼は、雛子という仲間のために怒っているのだ。
ユラユラがあらましを説明すると、スウマは悲しげな表情をして狼に近づいていった。
「あなたの仲間を思いやる気持ちは理解できます。ですから、僕は――」
電撃がほとばしり、狼を打った。