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76、対話の試み2

 まっさきに飛び出していったのはマタタビだった。動き回る狼に対して器用に位置取りをして追いつくと、剣をふるった。その効果は見えない。少なくとも見た目上は相手に痛手を与えていないように見える。

 続くようにして前に出たグラは、攻撃に移る前に狼に接近され、勢いよく頭で胴を押された。グラの口から変な声が漏れてよろめく。

 だが、ドラゴンの身体を押し切れなかったのか、よろめいただけだった。硬直して力の競い合いになるのを嫌ったのだろう。狼は跳び退くと、そのまま距離を取った。

 離れた場所で、唸り声とともにこちらをにらみ据えている。

 サソリは前進して人間を背にしたまま、戦いに加わることもできずにその場にいた。

 この機会に、ユラユラが前に出る。

 状況が止まっている。今こそ会話ができる状況だった。

「話を聞いてくださいー」

「……ああ、そうだな」

 不満そうな、声。

 狼からの声だった。

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