71、不安な待ち合わせ
街を出て、森の中をしばらく進んでいく。
小川の近くにあるやや大きい木の下で、サソリたちは立ち止った。
ドラゴンのグラが、木を見上げながらぼやく。
「なんていうか……森のなかって待ち合わせには不便だよな。ほとんどどこもかしこも変わり映えがしない景色だろ」
「それはまあ……。街の近くはなんとなく場所が分かるようになってきたんだけどね」
サソリは苦笑しながら言った。
グラが残念そうに息を吐いた。
「まあ、人間の街の近くも、魔物の街の近くも、待ち合わせ場所にするわけにはいかないからな」
自分たちが人間の街の近くへと進めば、街を守っている兵士や冒険者と戦いになってしまうだろう。逆に人間が魔物の街の近くへきても参加者に襲われるかもしれない。
やることもなく、雑談をして過ごす。
それから少し時間が経って、グラが言った。
「なあ。待ち合わせ場所がここじゃなかったとか……ないよな?」
「いや、大丈夫のはず……たぶん」
そんな会話に周囲の仲間達まで不安が伝わっていく。気にする様子がないのはカイトだけだ。
不安を紛らわせながらそれからの時間を過ごし、そして待ち人は来た。
その中の一人は全身に鎧を着こんでいた。